表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/29

カラオケ3



「……」


肩を掴んでいた手から、少しずつ力が抜けていく。


滝川さん自身も言い切ったあとで我に返ったみたいに息を乱していた。


「……っ」


唇を噛む。




僕みたいな捻くれた人間には、


真正面から来られるのが一番効く。


「……ごめん」


「……」


滝川さんは何も言わずに掴んでいた手を離し、体を離した。


「謝ってほしいわけじゃないです……」


滝川さんはしゃくりあげながら言う。


「ただ、逃げないでほしいだけです……」


「……」


逃げないで。


その言葉に、胸の奥が痛んだ。


僕はずっとそうだった。


都合が悪くなると冗談にしたり、理屈にしたり、自分を下げて話を終わらせたり。


傷つく前に、自分から降りる。


その方が楽だから。





僕は滝川さんの怒りにまだ呆気に取られていた。


(滝川さん、口調が全然違っていた、アレは、素…なのか…?)


正直、ビビり散らかしている。



滝川さんはソファーに座り直し、そしてまた俯いた。



「……嫌だったら帰ってもらって良いです…」


ここまで感情を爆発されたらそんなの…ズルいじゃないか。


「……」


僕は立てなかった。


帰る、なんて選択肢が、


頭の中で形にならない。


「…帰らないよ」


ようやく言葉にすると、


滝川さんの肩がぴくっと揺れた。


「……」


返事はない。


でも、少しだけ握っていた拳が緩む。


「…その」


僕は頭をかく。


何から言えばいいのか分からない。


「さっきの…ビックリした」


「……」


「かなり怖かった」


「…ごめんなさい」


小さくて、今にも消えそうな声。


「いや…」


思わず苦笑いが漏れる。


「でも、滝川さんがちゃんと本気なんだっていうのは…分かった」


その言葉に、


滝川さんの背中がまた少し揺れた。


「…本気です」


俯いたまま、


はっきり言う。


「…本気だから困ってるんだよ…」


本音だった。


すると、


滝川さんがゆっくり顔を上げる。


目元は赤いまま。


でも、さっきみたいな怒気はない。


「…困るって…迷惑ってことですか…」


「違う違う」


慌てて手を振る。


「そうじゃなくて…だからこそ尚更僕で良いのか、時期が早いんじゃないかって思っちゃって…」


「…そんなの、滝川が諦める理由になりません…早いと思うならこれからも滝川は離れませんから…」


無茶苦茶理論な気もするけど…ちゃんと考えているんだもんな。その結果の今なんだろうけど。


「じゃあさ、僕はどうすれば良いの?その…告白を受ければ良いの?それとも据え置き?拒絶?」


我ながら畳み掛けるような質問攻め。


「…出来れば、受けて欲しいです…拒絶はして欲しくないです…」


「でもお互いにちゃんと人となりを知らないじゃん、それを知ってからでも…」


「だから一緒にいます…でも、滝川の行動がいけなかったのは認めます、こんな気持ちになったのなんて初めてだから…どうしたら良いか分からなくて…」


「…滝川さんが謎なのは、どうしてそういう経験がないのか…なんだけど…」


「?」


「…だってほら…滝川さんってさ…」


あまり言いたくはないけど


「その、配信でも言ったかもしれないけど…」


「はい」


「可愛いからさ…」


「!!」


滝川さんの目が開かれる。


「だからさ…そういう経験、メチャクチャあるもんだと思ってて…」


これだけだとただ単に媚びた発言になってしまう。


「…あくまでも見た目の話だけどさ、モテてはいるでしょ?だから全然恋愛するチャンスはあったじゃん?」



「…確かに、よく可愛い〜とか、付き合って〜とかは言われましたけど…」


(まあ、そりゃそうだよな)


「でも滝川は好きとか、付き合いたいとか、そういうの…よく分からなかったです」


「……」


「人間に興味がないっていうか…」


(それはそれで結構重症だなぁ)


「でも三田さんのこと考えると、会いたくなって、話したくなって、他の人と喋ってると嫌で…」


鼻をすすって少し恥ずかしそうに視線を逸らす。


「…だから…滝川にとって、三田さんは特別です、自分でもビックリしています」


特別、か。


急な特別待遇に喜べない僕はやはりズレているのだろうか。


「それで…三田さんは滝川の事はどう思っているんですか…?」


(どうって…)


僕は頭をかきながら、


ずっと避けていたことを考える。


「…僕もさ」


「……?」


「正直、滝川さんのこと全く何とも思ってないなら、ここに来てないよ」


「……!」


目が丸くなる。


「でも」


先に釘を刺す。


「適度な距離を守らないとか、そういうのは本当に無理だし、ダメだよ」


「……」


しゅん、と分かりやすく落ち込む。


「最後まで聞いて」


「…はい」


「僕は慎重だし、捻くれてるし、面倒くさい」


少し間を置く。


「だから…適度な関係になればそれで良いんだよ、でも今はまだくっ付いたりとか、そんな時期じゃないでしょ」


滝川さんの目を見る。


「滝川さんはもう少し節度を持たないと、コレで本当に僕が滝川さんの事嫌いになっても文句は言えないでしょ」


「えっ嫌です、嫌いにならないでください」


「だから、そうならない為に僕は喋ってるんだよ、ちゃんと聞いて」


「……」


「良くも悪くも人間関係は一つ一つの積み重ねだよ」


なぜに先ほどブチギレていた相手に僕が説教をしているのか、でも止まらなかった。


関係を繋ぎ止めるために僕も必死だったのかも。



                    つづく


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ