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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第四部 前人類世界編

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251/683

251 Psychometry

 ジスカールが手に取ったのは、黄金製で宝石の装飾された杯だった。ケンの倉庫から出て来てそのまま使っている物だ。それを少し眺めてから目を閉じる。


「……これはケン、君の持ち物だね。随分長い間、他の財宝と共に倉庫に仕舞われていたようだ」

「……!」

「更にその前は――成る程、献上品だったんだな。ああ、凄いな。こんなに立派な王宮は初めて見た」


 ケンが元覇王である事は先程の自己紹介でジスカールも聞いている。杯の豪華さとケンを結びつけるのは難しくないだろう。倉庫に仕舞われていた事と、献上品であった事は推理出来てもおかしくはない。だが、王宮を見る事は不可能だ。それでも彼の言葉は確信に満ちている。


「この杯を君に献上したのは、青い羽毛の鳥人達だ。玉座にはつまらなそうな顔をした君が見える。隣は奥方かな、見事な月色の髪をして――耳が尖っているね、エルフかな。薔薇色の髪をした女性も近くに居る」

「見えているのか……?」

「うん、視えているよ」


 ケンがぽかんと口を開けた。他の皆も驚いたようにしている。杯の来歴や倉庫に放った時期などは覚えていない。が、青い羽毛の鳥人達と盟約を結んだ事と、エルフで月色の髪の女が妃だった事は薄っすら記憶にあった。何より薔薇の魔女の存在を見通している。皆の気配に気付くとジスカールは少し笑い、目を開いて杯を置いた。


「臣下の種族は様々で、衣装や建物も意匠が“混ざって”いる。この杯ひとつで、君がいかに偉大な王だったか――多くの民族を纏めて君臨していたかが分かるよ」

「ジスカール、あなた――物の記憶を視る事が出来るの?」

「その通り。死体は兎も角、生きた人間を視る事は出来ないがね。この能力のお陰でわたしの調査は他よりずっと早い。何重の封印が解けたのも、封印を掛けた当時の人々の姿を視る事が出来たからだ」


 納得して、カイが深い感嘆の息を零した。


「成る程。あなたの専門と非常に相性が良い。専門を選ぶより能力が先ですか?」

「能力が先だよ。ただ視るだけでは分からない事が、知識のお陰で分析出来て推し量れる。こんなに楽しい事は無い――と続けて何百年も経ってしまった」

「またジジイが増えたなァ」

「えっと、あなたとウルズスがこの世界に来る事になった経緯は聞いても大丈夫?」


 自分と状況が似ているかもしれず、気になっていたリョウがおずおず問うた。ジスカールが問題無い、と頷いて話し始める。


「当初はわたしも権威として世界中を調査する事が許されていた。いつの時代も、歴史を紐解く事は浪漫だからね。紀元までは進化の歴史を遡るようで特に問題は無かった。だが、調査が紀元前に及んだ時に問題が発生したんだ」


 少しだけ明るかったジスカールの声のトーンが落ちる。


「紀元前の超古代文明は、現代の文明を超えていた」

「ああ……」

「とある遺跡で、世界の勢力図を塗り替えかねないレベルの遺物が見付かった。過去にその文明を滅ぼした原因のひとつだ。決して世に出すべきではない」

「うむ……」


 それは例えば、この世界の前人類が全てを滅ぼしかけたような『過ぎた文明の産物』だったのだろう。


「調査団は争いを招かぬ為に秘匿と封印を決定した。だが金に目の眩んだ現地ガイドが、調査員を殺し遺物を盗んで国へ持ち込んだ。それで世界の知る所となってしまい――調査団の殆どが軍により拘束か殺害されてしまった」


 ジスカールの話は辛いものだった。上層の数人を残し、末端の調査員は殆ど殺されたのだという。生かされた数人もきつい拷問を受け、遺物の情報を徹底的に吐かされた。拷問の途中で死んでしまった者も居るし、拷問後に用無しと処刑された者も居る。結局ジスカール以外は誰も生き残らなかったそうだ。


「あんたも捕まッたのか?」

「ああ、だがもうその時わたしは不老不死だった。尋問中に死んだと見せかけて、死体置き場から逃げ出したんだよ。仲間を助けられなかった事は今でも悔やんでいるが、わたしには彼らを救う力が無かった」

「ジスカールどん……」


 痛ましげにメイが眉を下げる。他の皆も辛そうな顔で聞いていた。


「遺物を手に入れたのも、調査団を殺したのも発展途上の弱小国だった。彼らは以降文字通り世界の勢力図を塗り替えた。それほどに強い力だった。各地で戦争が起き、各国は対抗する為の“他の遺物”探しに躍起になった」

「ジスカールちゃんはどう動いたの……?」

「わたしは何とか母国に戻り、母国の軍の監視下に置かれて遺物探しを再開した」

 

 ジラフが心配そうに聞く。返事は何とも苦い顔だった。


「誤解されても仕方は無いが、それは争いを止める為だ。新たな遺物が増えて行けば、いずれ確実に世界は滅ぶ。世界中が探す以上、わたしが手を貸さずともいずれ見つかるだろう。先んじる為には国の力が必要だった。わたしは、軍を誤魔化しながら遺物を探し――秘密裏に“我が物”にしていったんだ」

「…………」


 軍の監視下で誤魔化すなど、きっと剃刀の刃を渡るような時間だったろう。


「その途中でウルズスに出会った。ウルズスは他の遺物よりもずっと危険な、恐らく超古代文明を滅ぼした一番の原因だと思う。それが分かった時点で、わたしはウルズスを連れて逃げ出した。勿論追っ手は掛かったが、わたしの不老不死とウルズスの力――後は着服した遺物の力で何とか目的を遂げる事が出来た」

「目的とは?」

「全ての危険な遺物の回収、もしくは破壊。大分時間は掛かって、随分世界も様変わりしてしまったが――完全な手遅れだけは免れた。最初の遺物も破壊したよ」


 そこでジスカールが葡萄酒を飲んで一息つく。回収と気軽に言うが、世界中に追われ、戦いながらの地獄のような道程だったと想像に難くない。皆が難しい顔をし、メイなどぼろぼろ泣き出していた。


「……それで最後はわたし自身を含め、危険な物全てを持って世界から逃亡を図った。行き先は不明だが、遺跡のひとつに異界へ繋がるゲートがあってね。潜った先が、君らも御存じの白い世界だったという訳だ」

「成る程、そこで神が介入したか。確かにこの世界に来る条件は満たしている」

 

 聞き終え、ケンが頷いた。

『規格外の力で世界に身を尽くし貢献した者。尚且つ、前の世界では報われずに滅びを願う、もしくは様々な事情で前の世界に居られなくなった者達』という嘗てカピバラの神が語った条件を彼は満たしている。ウルズスの力があるとはいえ、本質は彼の行いと精神だろう。


「何か、初めて心底尊敬できる……まともな人が来たって気がする……」

「リョウさん!? 俺は!?」

「何比べようとしてんだ。ジスカールに失礼だろ」

「ガンさんまで!?」


 彼の行いと精神に感服したリョウが、尊敬の眼差しでジスカールを見ている。ガンも同じような顔をしていた。ぐぬうしたものの、ケンとてまあ異論は無い。ので、咳払いをひとつ。確りとジスカールを見た。


「我々は貴殿とウルズスの“亡命”を歓迎する。この世界では楽しく平和に暮らせるよう取り計らおう」

「ありがとう、嬉しいよ。皆さん、これからどうぞ宜しく」


 ケンの太い笑みに、ジスカールもくしゃりと笑った。貴公ではなく貴殿と呼ぶあたり、ケンの中でも評価は高いのだなとカイとベルがこっそり笑って目配せをする。


「そうそう、ウルズスの精神は小さな子供みたいなものだ。超古代文明時代に非道な手段で生み出され、兵器としての扱いしかされていない。わたしと出会ってからも、世界中の人間に追われて嫌な目に遭っているから人間を嫌っている」

「ああ、それでか」

「だから失礼な態度をとる事があるかもしれないが、どうか長い目で見てやって欲しい。彼も傷ついているし、平和な世界を生きるのは今日が初日だからね」


 ずっと人間に良くない印象がある中、気まぐれに声を掛けたり遊んでくれた妖精や動物達の事は好きなのだそうだ。そんな事も聞きつつ皆昼食を食べ終わり、食後のデザートタイムへと移っていく。

お読み頂きありがとうございます!

次話は明日アップ予定です!

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