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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第三部 ダンジョン編

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247 デッキブラシ

 夕方過ぎにはベルとカイがデートから戻って来た。リョウとメイは一泊デートで不在なので、時間停止倉庫の作り置き料理が夕食だ。スペアリブのグリルにマグロと野菜のトマト煮、チーズサラダとマッシュポテト等々。今日はリョウの代わりにジラフが配膳をしてくれた。普段はリョウにお任せだが、いざ行うと大変手際が良い。


「ジラフはほんと何でも出来るんだなァ、尊敬するぜ」

「ウフッ! 何でもは出来ないわヨ、出来る事だけネ!」

「ベル嬢とカイさんのデートはどうだった!?」

「ちゃんとしっぽりしてきたか~!?」


 リョウとメイ以外が揃ったので食べ始める。話題というか、皆の視線が自然とベルの胸元の宝石に集中した。


「うふ……! ご覧の通りよ! 最高のデートだったわ!」

「お陰様で、とても喜んで頂けまして……!」

「ケン様も手伝ってくれたのよね。ありがとう、最高の贈り物だったわ」

「なに、俺は付き添いしただけだからな!」


 カーチャンがいつもより綺麗に見えるので、本当に楽しいデートだったんだろう。そう思って口にはしないがガンも何だか嬉しくなる。


「今頃リョウちゃんもメイちゃんに贈ってるのかしらネッ! 素敵だワ~!」

「あの二人はお泊りデートじゃろ? 今頃は子作りに励んどるかもしれんぞ~!」

「タッちゃんお下品よッ!」

「うはは~!」


 外野は好き勝手だが、村の恋人たちが幸せなのは良い事だ。何処に行ったかなどの話も弾みつつ、村に残った組がどんな休日を過ごしたかにも話は及んだ。


「ジラフったらコーヒーを淹れるのが得意なの? わたくしも今度頂きたいわ」

「アラッ、ベルちゃんお茶派じゃなかったの?」

「魔女はお茶会をするものだから、お茶が主体なのは確かよ。けれど別にコーヒーも嫌いじゃないもの。美味しいコーヒーなら是非頂きたいわ」

「私もコーヒーは詳しくないので、是非教わりたいですねえ」


 案外お茶派達もコーヒーには興味があるようで、明日の朝早速ジラフが振舞う事になった。そしてその流れでガンの戦闘糧食レーションの話になる。


「ガンナー殿の世界の食べ物じゃと!? クソマズなんじゃろ!?」

「おれが知らねえだけで戦闘糧食以外には美味いものもきっとあッたよ……!」

「けどガンナーはずっと戦闘糧食だけを食べ続けて来たんですよね?」

「それはそう……」


 ケンがベルとカイとタツにも食べさせようと、錠剤とゼリーパックとバーを皿に乗せて持って来る。


「口直しがある故、味見するなら今此処でした方が良いだろう。この錠剤が『無もしくは岩を砕いた』味、こっちのパックが『少し砂糖を入れた水を薬液で薄めた』味で、このバーが『甘いとしょっぱいと苦いと薬っぽいとミント的な清涼感が同時に訪れて忙しい』味だ」

「何ひとつ口に入れたくないんじゃけど!?」

「どう聞いても美味しくなさそうなんですが!?」


「美味くはねえよ、美味くは」

「食べた瞬間ガンナーちゃんを抱き締めたくなる味よ……!」

「食べなくてももう抱きしめたくなったわよ……ッ!」


 ベルとタツが『味見もしません』という顔をするので、仕方なくカイが味見に手を出した。


「一番人気はどれですか?」

「バーかな」

「ではそれを……」

 

 怖々とカイが真っ黒なバーを一口齧った。最初は不安げな顔で咀嚼していたが、少しすると驚いたように目を瞠る。


「これは――リコリス飴のような味ですね?」

「カイさん!? 平気なのか!?」

「カイちゃん……!?」

「成る程、この味は好き嫌いが分かれるでしょう。私はいける方なので平気です」


 ガンもケンもジラフもざわついた。


「リコリス飴ってなんじゃあ?」

「甘草――ハーブの根から作られるお菓子ですね。アニスオイルで甘く味を付けて、ゼラチンで飴状にするのだったかな。発祥地域では国民食のように好まれているのですが、他の地域では人気が無くて私の世界では世界一まずい飴と言われていました」

「わたくしの世界でもそう言われていたわね」

「どうして世界一まずい飴味を戦闘糧食に……!?」


 タツがまったく理解出来ない顔でガンを見る。ガンも心底理解出来ていない顔で見返した。


「じゃあバーは全部カイにやるよ……! おれあんま好きじゃねえから……!」

「ええ、非常用の戦闘糧食なのでは? 良いんですか?」

「おれあんま好きじゃねえから……!」

「確かにこれまでガンさんが食べ物の話をするとき、錠剤とゼリーパックは口に出していたがバーの事は全然言わなかったな?」

「おれだって好き嫌い位はある……!」


 バーの引き取り先が出来て嬉しい顔で、全てのバーをカイに押し付けた。『いいのかなあ』という顔で受け取ったカイだが、ふとその“包み”に目を遣る。


「……この包んである素材は何ですか? 始めて見ますね」

「合成樹脂のビニールだよ。ああ、そうか。ビニール無えんだったな此処」


 カイの指摘で初めて気付いたらしく、ジラフやケンも珍しそうに包みを見ている。


「簡単に言うと、石油を加工して出来てるんだ。おれたちが普段使うゴムは、ゴムの木からゴム液を採ってるだろ? 石油から化学で合成ゴムを作れたりもする」

「石油からか? 燃料以外に使った事は無かったな」

「魔法世界じゃ化学はあんま発達しねえだろうからなァ。まあ石油製品の方が便利だし耐熱性とか色々利点はあんだけどさ、環境に悪いんだよ」


 ガンが肩を竦める。


「ロボ太郎の世界に――多分おれ達が来る前のこの世界も、残骸だのを見るにそういう文明が発達してたと思う。だから“やり過ぎ”で自然環境が悪化したんだと思うぜ」

「成る程なあ」

「魔法が無い世界ってなんだか全体的に環境に悪い印象があるわねえ」

「ともあれこの程度のビニールで世界が滅ぶ事はないのでカイは安心してくれ」


 大丈夫そうなので安心してカイは全てのバーを引き取った。


「リョウもきっと興味があるでしょうから、明日食べさせてあげましょう」

「うむ、錠剤とゼリーパックも残っているからな。明日全て味見させてやろう!」

「そうじゃな。リョウ殿なら異界の味を知る事に躊躇い無いじゃろうて」

「そうネ。アタシもケンちゃんも全部味見しましたからネッ」


 リョウのあずかり知らぬ所で罰ゲームのような事が確定した。そして美味しい夕食の方を皆が再開したタイミングで、タツが『アッ』と顔を上げた。


「思い出した~! ケン殿ジラフ殿、トイレの下水だの作業はいつからかの~!?」

「唐突にどうした!? 図面が届いたと今日ジラフさんが言っていたから、明日にも着手は出来るが!?」

「何かあったのタッちゃん?」

「明日かぁ~!」


 タツがどうしたものかという顔で首を捻る。


「今朝方な、カピモットの坊ちゃん嬢ちゃんから続報があったのよ」

「続報? 次に来る新入りさんの事か?」

「うむ~! 相変わらず詳細は知れんのじゃけど~! ひとまず『大量にデッキブラシがあった方が良い』との事で~!?」

 

「どういう事だ!?」

「儂も分からん~!」

「何? 何か磨くのアタシ達!?」


 まったく理解が出来ずに聞いてみるが、タツとてまったく分かっていないのだ。


「ま、まあ……一から作らずともデッキブラシ位なら、海上都市の方で用意出来よう。にしても何なのだ……!」

「まじで分からん。苔むした大型ロボでも来るのか……!?」

「分からん~! 坊ちゃん嬢ちゃん達も確定するまで滅多な事は言えんちうて、詳細は中々教えてくれんのよ~!」


 ともあれ、あった方が良いとの事なので大量のデッキブラシは用意しておく事にする。謎は残ったが、翌朝の美味しいコーヒーを楽しみに気を取り直し、皆は休む事にした。明日の朝は美味しいコーヒーと一緒に、コーヒーに合う朝食を楽しむ予定だ。

お読み頂きありがとうございます!

次話は明日アップ予定です!

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