表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第三部 ダンジョン編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

240/677

240 特別な料理

 一方の恋人達、リョウとメイは以前皆で遊びに行った無人島へと来ていた。

 前に訪れた時と変わらぬ、手付かずの美しい無人島。断崖に囲まれた入り江に白い砂浜。見事に生えた椰子の木の葉が海風に揺れている。


「ありがとうございます! これで荷物は全部かな」

「何から何までありがとうごぜえます……!」


 移動には海上都市のクルーザーを使ったので、“荷物”も沢山乗せて貰った。砂浜まで荷物を運び出し、手伝ってくれたクルー達へと礼を言う。今日は一泊デートなので、クルーザーは一度海上都市へ戻り明日の朝また迎えに来てくれる予定だ。大量の荷物と共にクルーザーを見送り、二人きりになったリョウとメイが顔を見合わせた。


「今度は準備万端の無人島一泊だよメイさん……!」

「へぇ、前も楽しかったけど今回も楽しみだぁ!」


 明るい色のサマーワンピースに麦わら帽子、豊かな髪を“おさげ”にしたメイが微笑む。普段通りの恰好のリョウも微笑み返した。今日は水着ではない。海遊びではなく

明確な目的があって今回は此処に来ているのだ。


「じゃあ、準備をしようか……!」

「へぇ! おらがテントだとかはやるもんで、リョウどんは“本命”の準備を……!」

「分かりました! メイさんの為に全力を尽くします!」


 二人ともキリッとした顔をした後、迅速に準備を始めた。夜明け頃に出て来たから

、移動を踏まえてもまだまだ早い時間だ。それでも時間との戦いだった。


「楽しみだぁ……リョウどん、おら楽しみだぁ……!」

「あはは、まだ何時間も先だからね……! それまでは二人で作ってきたお弁当食べよう!」

「へぇ、お弁当も楽しみです……!」


 互いに別の作業をしながら会話も楽しみつつ。メイは手早くテントを張り、屋外用の椅子やテーブル、作業台も出し――これらは全てクルーザーから借りて来たものだ。それが終わると海水を汲んできてきて真水へ浄化する魔法を掛ける。


「リョウどん、飲み物を冷やしておきてえから氷を出して貰って良いだろか?」

「はあい、勿論!」


 リョウが魔法で氷を出し、氷を詰めた桶の中にメイが葡萄酒や飲料の瓶を入れていく。それが終わると作業台の上で持ち込んだ食材を切り始めた。

 

 リョウの方は持ち込んだブロック状の石材を積んで形を作り、鉄の網を乗せて焼き場のようなものを作っている。形には気を配り、通風孔の位置や大きさを何度も確認していた。そもそも焼くだけならクルーザー設備のBBQセットがあるのだが、今作っているものはそれよりもずっと大きい。


「ああ、おらの故郷の焼き場に似とるです。大きさが……」

「そうか、巨人は焼き場も大きいんだな。丸焼きは日常的だったの?」

「鶏みたいな小さいもんは丸焼きが基本だぁ。それ以上のサイズは焼くのに時間掛かるし難しいでしょう。だから普段は切って焼いて、お祭りや祝い事の時だけ丸焼きにしてたかな?」

「成る程成る程……」


 リョウが頷き、焼き場を完成させると次は沢山持ち込みの薪を燃やして炭を作り始めた。煙が出ない程度に赤く燃えた炭を次々焼き場の中へ放り込み、全体へ行き渡らせてゆく。そう、今回は“丸焼き”を作るのだ。


 今回のデートプランが決まったのは、二人で家畜の世話をしている時だった。メイがぽつりと『豚の丸焼きが食べたいなぁ……』と呟いた。丸焼きは時間が掛かるし手間も掛かるし難しい。この世界では村の完成式の時に一度出たきりだ。完成式の時にメイは居なかったので、当然食べていない。


 そこでリョウが『じゃあ、お出かけは豚の丸焼きデートにする?』と聞いた時のメイの顔が特大のイエスだった為、今現在こうなっている。


「僕の故郷は鉄串を通して回す焼き方と、こうして焼き場を作って網で焼く方法があったんだよね。回し続けるより、焼き場で火の加減を見る方が僕らも楽なので今回は焼き場です」

「おらの村も同じだったなぁ。家畜の丸焼きって、火加減や焼き加減が難しいだろ? だもんで村じゃ、丸焼きを上手に作れる男が尊敬されて一番モテとったぁ……」


 メイの村では大きな家畜の丸焼きは、力も体力も要るため主に男の仕事だったそうだ。そして丸焼きが上手な男は非常にモテたという。稀有なステータスの為、外見や財力なんかを上回るモテ要素だったらしい。


「かくいうおらの秘めた初恋も、村で一番丸焼きが上手かった近所の兄さんで……」

「く……! 僕の方が上手いと今日証明してみせるよ……!」


 淡い初恋を思い出し頬を染めるメイを見て、リョウが村で一番丸焼きが上手かった近所の兄さんに大変な対抗心を燃やした。

 メイが作業をやり終えた段階で炭の番を代わり、リョウが作業場へと立つ。持ち込んだ豚丸ごと一匹を台に乗せ、割り開いたりと焼く為の下準備をしていく。


「リョウどんそれは……?」

「これはね、海上都市の料理人さんに教わった手法だよ。大きなお肉だから、肉の乾燥を防ぐのと満遍なく味を入れる目的があります」


 リョウが大きな注射器で豚に何かを注射している。そんな手法を見たのは初めてだったので、メイが目を丸くした。


「へぇ……! そんな方法が……!」

「今注射しているのは果汁と白ワイン酢、塩と乾燥玉ねぎ粉などを混ぜた物です」

「うう、聞いただけでよだれが出ちまう……」

「ふふふ……! ぜったいに近所のお兄さんには負けないからね……!」


 その後で肉全体に塩やスパイスを塗り込み、裏返しやすいよう金属網をお盆代わり、二人で四隅を持って焼き場へと運んでいく。


「せーのでいくよ」

「へぇ!」

「せーの!」


 どすんと豚が大の字に網の上に横たわり、位置を調整した後で鉄板で蓋をした。リョウが慎重に通風孔からシャベルを入れて炭の量を調整し、深く頷く。


「――よし、これで10時間じっくり焼いていくよ。温度を一定に保ちたいから、ずっと火を見ていないとならないけど」

「うんうん、交代しながら頑張ろう!」

「後は乾燥防止と味付けでちょこちょこ塗っていきます」


 リョウが味付け用の調味料の入った水と、大きな刷毛を示す。改めて見ると物凄い手間なのだな、とメイが感心した。


「ふへぇ……! そりゃこんな大変な仕事……モテる訳だなぁ……!」

「えっ、大変さで初恋したんじゃないの!?」

「ふえへへぇ……その、細かな作り方は知らんかった……! おらの場合はあまりの美味しさで……!」

「味か……! ちょ、あの、僕がこの先ずっと美味しい物を食べさせてあげるから、他に美味しい物をくれる人がいてもついていっちゃ駄目だよ……!?」


 メイが照れ照れする。近所の兄さんが作る丸焼きが一番美味かったのだ。だがリョウの丸焼きはそれを凌駕しそうな気配で凄く楽しみだ。後で交代するにしても、最初は火の傍に座って二人で火の面倒を見る事にした。


「豚は脂が多いから、一定の温度でじっくり焼いて脂を溶かすんだ。日常的に出来る料理じゃないけど、短時間で焼くより物凄く柔らかく仕上がって美味しいよ」

「よ、よだれが……! 場所によって炭の量を変えとるのはどうして?」

「部位によって焼けやすさが違うから、火力を変えているんだよ。全部を美味しく仕上げる為に気を使っています!」

「リョウどんがおらの村に居なくて良かった……! 他の女に盗られちまう……!」


 度々気を抜くと垂れそうになるよだれにハッとしながら、メイも気を引き締めてリョウのやり方を学んだ。折角自分の為に焼いてくれているのに、交代した時にリョウの仕事を台無しにしてはならないからである。


「なあ、リョウどん……」

「なあに?」

「いい匂いするな……」

「お腹空いているでしょう。お弁当食べよ?」


 肉が焼けていくたまらない匂いの中、丸焼きデートは進んでいく。

お読み頂きありがとうございます!

次話は明日アップ予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ