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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第三部 ダンジョン編

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216 働いた後の飯は美味い

 最初に四季の無い地域に来たので、今でも雨季と乾季以外の違いはよく分からない。が、植物の感じからおよそリョウが来た頃は春とされていた。まだ丸一年は経っていないが、あとひと月かふた月くらいでまる一年になるだろう。


 となると春より少し早い位の時期なのだが、ゲートで繋いだ農地の方は半球が異なる為に季節が違った。今日カイの指示で収穫した畑の野菜は全て夏野菜だ。他の土地にはまた別の季節野菜があるらしいが、其方の収穫は後日で良いらしい。


「収穫してしまって、土地を休ませる準備をすれば一月位は人手が不要になりますからね。ケンの倉庫や、新たにベルと作った時間停止倉庫があって良かったです」

「流石にこれだけの量は一度に食べられないもんねえ」

「土地を休ませるッて何するんだ?」

「今回の畑では、堆肥を鋤き込んで耕した後に放置です」

「成る程」


 市場が開けそうな位に今回は大量収穫した。せっせとケンが自分の倉庫へ、カイとリョウとガンは厨房横の時間停止倉庫へと野菜を運んでいる。ジラフとメイとタツは家畜の世話に出て、ベルは小人の各家庭を回って往診しており今は不在だ。


「大分作り置きはしてあるけどさ、こうして採れたてを見ると料理したり食べたくなっちゃうな~!」

「今回は特に夏野菜ですからねえ!」

「明日はカレー曜日だから、カレーは明日にするとして……」


 丁度食事時だし、皆が頑張ったお陰で少し位は調理をする余裕がある。折角の夏野菜だし何かしたいな――と考えていると、ロボ太郎が飛んできた。今週のロボ太郎は皆の所を巡回し、データ収集と管理、更には伝言役として働いている。


『ガガッピ! リョウ! 焼きトウモロコシと枝豆でス!』

「……ロボ太郎それだ!」

『労働の後ハ! 枝豆とビールでス!』

「ほう、ジャポンの風習か? ビールは確か船から貰って来た奴があったな!」

『ガガ! ビールと枝豆が嫌いなオッサンは! あまりイませン!』


 ロボ太郎がぎゅいんぎゅいん旋回して推してくるので、早速四人で夕食の準備を始めた。ケンが冷蔵庫からビール樽を担いで運び、ガンが火を起こし、リョウとカイがトウモロコシの皮を剥き、枝豆の先端を切り落として塩揉みして茹でる準備をする。


「もうすぐメイ達も戻って来るだろ。丁度いいな」

「うんうん、作り置きも出しちゃおう」

「カイさん氷を出せ!」

「はいはい」


 カイが魔法で氷を出し、それを敷き詰めたタライへビール樽を埋める。リョウがトウモロコシと枝豆を茹でている間に、他の面々が網を用意し作り置きの料理を食卓へ出し、と夕食の準備を整えていった。


 今日の作り置きメニューはトマトソースの牛ステーキにグリルチキン、小魚の南蛮漬け、チーズとナッツ入りの香草サラダとパンだ。ガンは酒を飲みたくないので、蜂蜜にレモンを絞ってレモネードを自力で作っていた。


「よし! じゃあ焼いちゃうよ焼いちゃうよ……!」

「何かいつものトウモロコシと違うな?」

「ふふふ、これはジャポンの焼きとうもろこしだからね!」


 いつもは茹でるだけか、ぶつ切りにして焼いた物が出てくるが今日は丸ごとだ。網に置いたトウモロコシを、くるくると転がしながらリョウがハケで茶色い液体を塗っている。物凄く良い匂いがした。


「あ、これ醤油の匂いだ」

「そそ、ロボ太郎のレシピで見て気になってたんだよね~!」

「枝豆も茹で上がりましたよ!」

「おお、もう食べられるのか!?」

「まだです!」


 カイが茹でた枝豆をザルにあげ、確り湯を切ってから塩を振る。ザルを揺らし満遍なく塩を行き渡らせた所で、ケンに団扇うちわを渡した。


「扇いで冷まして下さい。冷める頃には塩味が染み込んで、食べ頃ですよ……!」

「おお……!」

「お、皆戻って来たな」


 どやどやと牧畜組とベルが戻って来るのが見えた。


「アラッ、何か良い匂いするわネッ!」

「おらもう腹ぺこだぁ~!」

「皆おかえり~!」


 食いしん坊組が釣られるように近寄って来る。ベルはロボ太郎に往診してきた小人達のデータを共有しそれから、タツはガンに呼ばれて炭酸水を出してやっていた。


「よし、皆揃ったな! ちょうど冷めたぞ!」

「こっちもちょうど焼けた所だよ~!」


 皆で食卓を囲み、頂きますの挨拶。一斉に食べ始めた。


「はふ、あつ、うま……!」

「あッつ、うま……!」

「ふはっ、このトウモロコシうんめえな……!」

「これは何本でも食べられるわネッ!」


 焼きトウモロコシ組があつあつはふはふと美味そうに食べている。その横でオッサン組が枝豆とビールをキめていた。

 

「成る程! 実に美味い! この組み合わせは最高だ! でかしたぞロボ太郎!」

『恐悦至極! 恐悦至極! ガガッピ~!』

「この剥いて食べるというのが趣があって良いですねえ」

「儂清酒が好きじゃけど、発泡酒も悪くないのう!」

「わたくしもこの組み合わせはアリだわ」


 どの料理も好評で、いつもより働いた疲れもあって皆がつがつとよく食べた。山盛りの料理も見る間に空になってしまう。


「普段より忙しいけど、なんかより食事が美味しく感じるな。これは発見だ」

「こりゃ風呂も気持ち良いんじゃねえか」

「良いわネッ! 片付けたらお風呂行きましょう!」


 普段なら担当制だが、今は一丸となって働いているので片付けも皆で行った。わいわい賑やかで、これはこれで悪くないなと思わせる。


「じゃあメイ、お風呂へ行きましょう」

「へぇ、ベルどん!」


 片付け後、先に女子達が風呂へ向かい、男子組も行こうかと立ち上がる。


「じゃあ儂は海上都市に戻るわい~!」

「タッちゃんもたまには一緒に入れば良いのに!」

「うはは! あちらじゃと薄着の女人が身体を洗ってくれるのよ~!」


 タツも機嫌よく海上都市へと戻っていった。


「よし、では我らも風呂へ入るか!」


 ケンの号令で残りの男子も風呂へと向かった。相変わらずのバカ風呂――小人の手が入り更にグレードアップしたスパの『男湯』の暖簾を潜っていく。そして、脱衣所でがやがや着替えている時に“それ”は起こった。


「……ガンナー、どうしたんです?」

「ああ、いや、ちょっと……リョウ」

「なになに?」


 何故だかガンナーがしげしげ此方を見て来るので、カイが不思議そうにする。リョウを手招いた後、ガンがおもむろにカイの胸板に触れた。


「!?」

「…………ああ……」

「大丈夫だ。やッてみろ」

 

 辛そうな顔で呻くリョウ。何が大丈夫なのか分からないが神妙に頷くガン。辛そうな顔のままリョウまでもがカイの胸板に触れた。


「何なんです!?」

「……ああ、うん……大丈夫……」

「だろ?」

「何が……!?」


 戸惑うカイを放置して、そのまま二人はジラフの方へと向かった。


「ジラフ……その、ちょっと胸触っていいか?」

「ジラフさんいいかな……?」

「キャア! なになに!? 全然意味分かんないけど良いわよッ!」

「どうして私の時は何も聞かなかったんですか!?」


 カイの問いかけはスルーされ、そっと二人はジラフの胸板も触らせて貰った。


「きゃん! ダブルタッチ! 何だか照れちゃうッ!」

「あああああ駄目だあああああああケンさんと体格ほぼ一緒だもんな駄目だあああああウワアアアアア……!」

「ああ……ああ、そうだな……!」


 触れた途端にリョウがまた膝を付き床を叩いて苦しみ始める。ガンも神妙な顔つきでリョウの肩を抱いて慰めた。


「ありがとな、ジラフ……リョウは駄目ッつったけど、全然おまえの胸筋は駄目じゃねえよ……死ぬほど逞しいよ……」

「そ、そう、ありがと……?」

「説明が難しいからしねえけど、ケンが全部悪ィんだ……察してくれ……!」

「ええ、分かったわヨ……!」


 先程からこの様子に声も掛けず、ただ『ヒィーッ!』と引き笑いで悶絶しているケンを見れば、また何か悪さをしたのだろうという察しはついた。


「もう、ケンちゃんったら! あんまり悪いコト教えちゃ駄目よッ!」

「ヒィーッ!」

「一体何があったんですかもう……!」

「知りたいならおまえもケンかジラフの胸触らせて貰え……」

「おすすめはしないけどね……ッ!」

「ええ……!?」


 釈然としない顔のカイと、未だ笑いの治まらないケンを引っ張って、皆で風呂へと入って行く。沢山働いた後の風呂は、食事と同じくやはり最高だった。

お読み頂きありがとうございます!

次話は明日アップ予定です!

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