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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第三部 ダンジョン編

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211 出産ラッシュ

 魔女の屋敷の大広間は、野戦病院のように小人用の小さな寝台が並べられ、既に数人大きなお腹の女小人が休んでいた。その傍らには伴侶である男小人がついて、かいがいしく世話を焼いている。


「いい? もうすぐ出産が始まると思うわ。最後にもう一度確認するわよ?」


 指揮官ベルの前に、メイとジラフとガンが整列している。ベルだけは何故か普段にもまして豪華なドレスに身を包んでいるが、他は全員清潔な白衣に身を包み手袋までして衛生に気を使っている。


「人間と女小人の陣痛は違います。はい、メイ答えて」

「へぇ! 女小人はお腹の発光具合で間隔を測ります! お日様みたいにピカーッとしたらもう生まれる合図だぁ!」

「よろしい! では陣痛で妊婦が苦しんでいたらどうしますか。はい、ジラフ」

「ハイッ! 朝露を口に含ませたり花の香りを嗅がせたりしますッ! お腹には夜露と魔法を練り合わせた軟膏を塗って痛みを緩和しますッ!」

「よろしい!」


 ガンが未だに解せぬ顔でやり取りを聞いている。知識として人間の出産の流れ位は知っているが、小人の出産の流れが違い過ぎて本当に意味が分からない。小人に限らず妖精の増え方は色々あるらしいが、ベルの雇っている小人達に関しては今話している方法で生まれるそうだ。


「じゃあガンナー、ついに産まれる時が来ました。小人は何処から生まれますか。産まれたらどうすればいいでしょうか!」

「え、えっと……人間と違って産道を通らず、お腹からエーテル状? の光の玉がぽんッと出て来るので――……それを受け止めます……」

「不十分! 何で受け止めるのだったかしら!?」


 鼻先に指を突き付けられ、慌ててマニュアルを思い出す。

 

「ゆ、夢と希望と花びらと葉っぱ、愛の魔法を敷き詰めた両親手製の籠です……」

「そうです! 籠に受け止めて初めてエーテル状の命が赤子の形になります!」

「ちなみにこの籠に襤褸切れやカタツムリを入れておくと男の子、お砂糖やスパイスを入れておくと女の子で生まれるのよネッ!」

「そうよジラフ! ちゃんと学んでいるわねッ!」


 ジラフが勉強熱心なので褒められている。ガンはどうしても宇宙猫の顔になる。


「この受け取りは伴侶たる男小人が行います。が、たまに元気が良過ぎて飛んでいってしまう光の玉が発生します! その時こそあなた達の出番よ!」

「へぇ! この魔法の糸で編んだタモで受け止めます!」


 メイがふすッと鼻息を零して握った虫取り網のようなタモを揺らした。


「そうよ、それで受け止めれば光の玉は形を結ばない。そうっと父親に渡してあげてね! 絶対に床へは落とさない事! 悪い妖精として生まれてしまうわ!」


 全員こくこくと頷いた。ベルも満足そうに頷く。


「では最後に、産まれた時に掛けるお祝いの言葉よ」

「へぇ! 『おひさまよりぽかぽかと健やかな子になりますよう』ッ!」

「ハイッ! 『おつきさまよりきらきらと美しい子になりますよう』ッ!」

「ええと……『おほしさまよりぴかぴかと豊かな子になりますよう』……」


「よろしい! 必ず生まれた全ての子に掛けてあげること! 良いわねッ!」

「んで、カーチャンは何を担当するんだ?」


 白衣の三人はタモを持っているが、ベルは豪華なドレスでとても手伝う感じではない。問われるとふふんと笑い細い魔法の杖を取り出した。


「わたくしはゴッドマザー、後見人として生まれた子らに洗礼と祝福を与える大切な役目があるのよ。わたくしの眷属として霊的な保護を与えてあげるの」

「何か分からんけど分かッた」

「他に質問は無いわね!? では手分けして巡回とお手伝い! いつ始まってもおかしくないわよッ!」


 ベルの号令で三人はそれぞれ広間を回り始めた。



 * * *


 

「お、ノックノックとオッチョオッチョ。ベッド隣なのか。調子どうだ?」

『ガンナー! 手伝いに来てくれたの?』

『わあ……ありがとう……! い、いつ生まれるかドキドキだよぉ……!』


 ノックノックとオッチョオッチョは、凶兆戦の時にガンを助けに来てくれた小人代表団の筆頭だ。言い出しっぺのノックノックと、最初に賛同してくれたオッチョオッチョは今では大親友らしい。奥方同士も仲が良いみたいで、隣同士のベッドで互いを励ますよう手を握り合っている。その周囲を旦那二人がばたばた落ち着きなく駆け回って世話をしていた。


「パッタパッタとセッカセッカも頑張れよ。皆で手伝うからな」

『ありがとう、ガンナー! 心強いわ』

『うふふ、頼もしい。旦那様ったらさっきからずっとこんな調子なんだもの』


 ノックノックは兎も角、オッチョオッチョはドキドキが最高潮で今にも倒れそうに緊張していた。それでもあれやこれやと一生懸命に世話を焼いている。


『だって、だって、ぼ、僕の最愛の奥さんがこどもを産むんだよ……! 僕とセッカセッカのこどもなんだよ……! 嬉しいのと、ドキドキではちきれそう……!』

『分かる、僕もだよ……! オッチョオッチョ、一緒に頑張ろう……!』

『うん……!』


 奥方同士ならず、旦那同士が励ます様子を見て微笑ましいなあと思っていた所、急にセッカセッカが苦しみ出した。


『うう……!』

『セッカセッカ!? 大丈夫……!?』

『セッカセッカ、大丈夫よ。私もついて――ううっ!』

『パッタパッタ!?』


 次いでパッタパッタも苦しみだす。二人のまん丸のお腹が、ネグリジェ越しでも分かる位“おひさま”みたいに輝いていた。これは先程確認した生まれる合図だ。

 

「お、おい……! 産まれる、産まれるぞ……ッ! メイ、ジラフッ!」

「おらの方も産まれそうだッ!」

「アタシの方もよッ! 各自近くの出産を手伝ってッ!」

 

 慌てて助けを求めて二人の方を見るが、あちらもあちらで今にも産まれそうな小人の対応に追われていた。広間のあちこちでピカーッとしている。


「お、おう……ッ!」

『わあ、わああ……っ、パッタパッタ! がんばれ、パッタパッタ……っ!』

『セッカセッカ、大丈夫だよ、ぼ、僕がついてる……っ!』


 ノックノックとオッチョオッチョが慌てて妻を励ますべくぎゅっと手を握って声を掛けた。ガンもつられて慌ててしまって、物凄くおろおろする。


『うううう……っ!』

『うぐうう……っ!』

「く、苦しんでる時は朝露と花と……っ、いやもうその段階じゃねえな!?」


 眩しい程にパッタパッタとセッカセッカのお腹が光っている。今にも突き破って溢れ出しそうだ。なのでタモを握り直した。


「おおおまえらっ、籠! 籠持ッとけ……! 手握ってる場合じゃねえぞ……!」

『ハッ!』

『そうだった!』


 ノックノックとオッチョオッチョも初の出産立ち合いなので物凄くおろおろしている。促しに妻の手を離し、大切な受け止め籠を両手でしっかりと持つ。ガンも何があっても良いようにしっかりとタモを構えた。


『う、う、産まれる……っ!』

『しっかり受け止めてね……っ!』


 二人が宣言した瞬間、ぽんッと光の玉が腹を突き破るよう――エーテルの塊なので実際に肉を突き破った訳ではない、が勢いよく飛び出て来る。


『わ、あ……わああっ!』

『うええええ……!』

「オッチョオッチョ! 大丈夫だ!」


 ノックノックが何とか上手に受け止め、オッチョオッチョの方は予想以上に光の玉が飛んだので狼狽している。代わりにガンが駆け出した。


「めちゃくちゃ元気だな……ッ!」


 数メートルも飛んだ光の玉をなんとかタモで掬い、床に落ちて悪い妖精になる事は避けられた。が、滅茶苦茶心臓に悪い。ばくばく心臓を鳴らしながら、慎重に掬った光の玉をオッチョオッチョの方まで持って行った。


「そら、ちゃんと受け止めるんだぞ」

『あ、あっ、ありがとう、ガンナーありがとう……!』


 そうっとタモから籠に光の玉を移す。途端にふわっと優しい光が溢れた。傍らのノックノックの抱える籠からもだ。目を丸くして見ていると光の玉が変形し、次の瞬間には小さな小人の赤ちゃんが形を結んだのである。

お読み頂きありがとうございます!

次話は明日アップ予定です!

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