16記
「とりあえず、初等科の教科書探してきたわ。」
ヴァンパイアの時代が終わって、Vampの時代が始まるまでの歴史書。
この国の子供が貴族、市井関係なく一番最初に手に取る教科書。
最も深く学んだ今であれば呆れることこの上ない愚の骨頂のような歴史ではあるが。
「えーと、…その昔、ヴァンパイアの王は怒り、その怒りの矛先をなんの罪もないVampの民に向けた。」
その怒りは凄まじいものなり。国王はVampの民草を滅するよう命じた。
ただのひとりも残すことは許さぬと。
市中では凄惨なまでの殺戮が繰り返され、その所業はヴァンパイアの民たちが目を背ける程のものだった。
そして、愚かなる日、愚かなる行いは為された。
「王は命じた。Vampの民を皆殺し、最後の一人たりとも生かすことは許さぬと。」
その虐殺は三日三晩に及び、新たに生まれ落ちた命ですら刈り取られた。
まさに悲劇と言わず、何と言えばいいのか言葉もないような有り様であった。
Vampの悲嘆と悲痛の声は天に届き、赤い血の色の雨が国土を煙らせ、常世の闇の魔法が解けて国土に光が降り注いだ。
「その後、光の中で生きていくために生まれてくる子どもたちはVampとして生まれ落ちてくるようになった。」
これが建国神話とも言える歴史のあらまし。
とある歴史学者は、我々Vampの体は常世の闇の魔法が解けた世界で生きるために適応した姿なのだと。
さらっと歴史学をまとめてみたけど、ひどい王侯と貴族というものはいつの時代、どの世代でも一定数はいるのが当たり前なわけで。
「どう?これが血の雨事件以前のこの国の歴史のダイジェストになるけど。」
人によっては忌むべき歴史として学ぶことを拒むこともある。
私やノーザンバードの民たちはそうは思わない。だから、領民が学ぶ基礎教育にはこのことも組み込んで教育を施している。
「なんて言ったらいいか。この国の過去の王侯と貴族は腐っているってことぐらいか?」
こんな命令を下す当時の国王もさることながら、その命令を聞き分けてしまう貴族も頭が良いとは思い難い。
その王侯と貴族の血脈と思わしきなことに嫌気が差す。
この瞳と髪の色はその王侯と貴族の血筋であると嫌と言うほど示しているけど、それに嫌悪感しかない。
「とりあえず、血の雨事件のことはわかったんだけど…、王道十家ってなんだ?」
深い溜め息と、頭を押さえて深い眉間のシワ。
嫌だ、嫌だと頭を振る彼女。
あれ、これって常識であったりするわけ…?
そんなわけないよね___。




