14記
『ノードリン学園の入学式以来、いかがお過ごしかと思います。
僕は、こちらでヴァンパイア史とヴァンプ史の授業も始まり、楽しく学んでいます。
さて、お姉様に頼まれました証拠の写しを送りますので、断罪の日まで念のため保管をお願いいたします。』
弟、リオからの手紙にはたくさんの資料が添付されていた。
中でも群を抜いているのが、アイリス伯爵家の家計簿に11年前より削減されたリリーの養育費がある点。
それに代わるように使途不明の一人分の侍女の養い費用が記載されている。
この侍女の出自は貴族家でリルアの学園入学に合わせて引き取られた体をとっているが。
どう考えてもリリーの養育費として計上されたもの。
そして、ノーザンバード辺境伯からの遺贈とされている同額の資金。
その資金は。
「リリー、あなたって子は…。」
その資金源はノーザンバード運営をして稼いだ
資金。
領民をも納得させているのだろう。
それにしたって、この仕打ちはない。
だから、期を見てすべてを王室審議会貴族委員査問にかける。
リリー。もう少しだけ時間をちょうだい。
彼がリード公爵の地位か、今は儀礼称号のリード伯爵位を譲られてから。
そのときにはアイリス伯爵とも対等にリリーを養女として迎えると言えるのに。
「…リルア、貴女に頼むべきではないとわかっているの。
だけど、お願い。リリーを、あの子を守ってあげて…。」
消え入りそうな掠れた弱々しい声。
本当に母の声か疑いたくなるくらいだった。
私は守れなかった。
リリーが亡くなったとされて、学園で再会するまで。
それまでの間、リリーが生きていることも、一人でアイリス伯爵の領地で生活していたことも知らなかった。
妹を知っているつもりでいてなにも知らない。
「…ゴクッ。…はぁっ。」
大丈夫、いつもの発作よ。
あの流行り病は心の臓に軽い後遺症を残して寛解した。
お母様…。
あんまり記憶にないけど、優しくて。
病気がちなのは似てしまったわね。
フィアにも話してはいない。
フィアは唯一無二の大切な家族。
そんな家族にすら隠すことは辛い。
だけど…。
「学園を卒業するまででいい。」
名実ともにノーザンバード辺境伯総領娘を名乗れるようになったなら…。
フィアを嫁に出してそしたら。
それまででいい。
アルプ、あなたに頼みがあるの。
この書き物をあたしの死期に国に提出してほしいの。
フィアがこのノーザンバード辺境伯家を継ぐための資料よ。
あの子と出会ってから決めていたことよ。
あの子は、私に似ているわ。
国も年は違えど、あまり変わらない私たちのことを咎めることはないでしょう。
この二つの覚え書きがこの国の歴史を変えることは未だ、誰も知らない───。




