13記
「リオ、いい?これから知ることは秘すこと。
お前ももう、アイリスの家を離れた。
だから、この事を話すのよ。」
決してお父様に知られてはいけない。
そう言ってお姉様は女子寮を訪ねる手筈を整えた。
今日僕は、ノードリン学園初等部に入学した。
お姉様が前年の春に卒業された由緒ある学園。
僕が生まれた頃にはお姉様は学園にいらして長期休暇のときしか会えなかったけれど、とても優しいお姉様だ。
「リリー、お邪魔するわ。」
リルア様、去年のご成婚以来でございますね。
相変わらず堅苦しいこの子は。
主従と言う立場でしか接してはくれないのだろうか?
実の姉妹だと言うのに。
「リルアお姉様、そちらの方は?」
お姉様に似た面差しの儚い美しさを持ったお姉様よりいくつか下の人。
優しそうな人。
そちらの方、だなんて呼ばないで。
お願いよ。
震えた声の姉。
「この子はリリー=アイリス。
私の3つ違いの妹。あなたにとっては二番目の姉。」
僕、知らない。休暇の時だって家に帰らなかったじゃないか!
容赦のない物言いと風格は父、アイリス伯爵に似たのだとすぐわかる。
リルアはリオをなだめるのに必死だ。
「…ふぅ。お姉様、お止めくださいな。
リリー=アイリスはもうこの世には居ないこの子の姉です。」
公的には5歳で流行病を得て亡くなった故人に過ぎませんわ。
リオと言ったわね。私のことは捨て置いてくださいまし。
頑ななまでに姉であることを否定するリリー嬢。
どうして?気になり始めたらどうしようもない。
「お姉様、どうしてリリー様はあそこまで頑なにアイリス伯爵息女であることを否定するのですか?」
ため息をつき、それは父が、アイリス伯爵がリリーを亡き者としたことがきっかけと言う。
リリー誕生後、体の弱かったリリアーヌはさらに弱りはてた。
そして、リリー誕生から5年の月日がたち、流行り病を得て亡くなった。
「同じときにリリーも流行り病を得ていて。
領地にいたリリーを同じように亡き者と届け出た。」
公的にはリリー=アイリスは亡くなった。
リリーは今、母方の祖父の養女としてリリー=ノーザンバード辺境伯総領娘を名乗っている。
彼女の夫が絶えて久しいノーザンバード辺境伯を名乗ることになるのよ。
「いーい?お父様には言ってはダメ。
リリーが養女に行ったことをまだ知らない。
その間に、お父様の弱味を握って欲しい。」
リリーを幸せにしてあげたいの。
だって、私はあの子の姉。
大切な、家族ですもの───。




