12記
「驚いたなぁ、フィアが辺境伯の娘だったなんて。」
いいえ。あれはリリー様が手を回してくれたから。
本当は分家の村長の庶子だったのに・・・。
リリー様がリリアーヌ様の実家を総領娘として継ぐことで、本来ありはしない歴史を改変した。
フィアは実はリリーの従妹であると。
「お母様はきっともう一人の娘の誕生を喜んだことでしょう。」
お母様には幼くして亡くした妹がいた。
その妹が生きていればちょうどあなたくらいになる娘がいる年頃なんですって。
さすがに大昔に亡くなった人の死亡届けは覆せなかったから、過去を遡ってお母様の養女としたのよ。
フィア、あなたと初めて出会ったとき、あなたは私に忠誠を誓ってくれました。
その忠誠に報いただけのこと。
「あなたに嫁いで、子を産み育てる幸せな姿を見たいんですって。」
そのためにリリー様は虚偽の申告を国に?
いいえ、罪滅ぼしのためだとおっしゃっていたわ。
自分自身が監督しなければならない村長の庶子を長子より引き立てることで村長にはいい薬となると。
今頃、ミーズワース婦人にプレゼンしてるに違いないわね。
うちの妹はこんなにお宅の息子さんにふさわしいとね。
「フィア嬢、どうかこの私の妻となっていただけないだろうか?」
騎士の礼を取り、結婚の申し出をする愛しい人。
もちろん、頷いた。
お姉様もこのためにノーザンバードの後継を名乗り出ることを予定より早めた。
これてはお姉様に大きな借りができてしまう。
「リリー様が学園を出て、ノーザンバード辺境伯家の正当な総領娘となるまでそばでいて差し上げたい。
あたしを救ってくれたのはあの方だもの。」
言わずともフィアの思いはわかっている。
それに、カイアが学園を卒業できない限り、ミーズワース男爵は継承できない。
貴族議会の審議では、18に満たない者の継承として特例でカイアが学園を卒業する直前で継承としてもらっている。
末端の男爵などどの様なものでもいいとばかりに直系の血筋を選んだとしか思えない結果だった。
「ああ、フィアの姉なら俺にとっては義理の姉になる。
ノーザンバード辺境伯家と親戚として付き合わせて頂こう。」
こんな年若い財産もないような男爵でよければだけど。
もちろんよ。お姉様が妹にした遠縁の娘を大切にしないわけないわ。
その妹の嫁ぎ先もね。
そういう人だから。
もう、何年も見続けてきたからわかる。
「…リリー様に正式に妹御をいただく挨拶をしよう。」
お互い、まだ仮の身分ではあるけれど。
偽りを真実に。
本物にしていこうと決めた。
全ては、優しい嘘のために───。




