Sideハンナ
初めてアカデミーに来た時、あたしはまじで緊張してた。
いよいよマティアスと会えると思ったら気持ちが高ぶって手とか震えて、大丈夫かな?嫌われたりしないかな?そんなことばかり考えてた。
あと頭の片隅で、ヴェロニカに意地悪されるのこわいなーとかも考えてたかも。
だから、ヴェロたんが話しかけてくれて同じ転生者だってわかったときはめっちゃ嬉しかったし、友達になれてとにかく楽しかった。
プリニワトークしたり、マティアスのカッコ良さとかとかベネディクトのスマートさの激論したりして、笑ったり騒いだり、転生前と変わらない生活に戻ったみたいで、毎日ヴェロたんに会えるのが楽しみだった。
ヴェロたんがベネディクトのことを本当に好きなのは、見てればすぐわかった。
ベネディクトの前に来るともじもじしたり、慌てたりして、表情がくるくる変わって笑っちゃった。
笑うと、ヴェロたんは赤くなってすごい怒るの!それもまた可愛くてからかってた。
逆にあたしはマティアスと喋るときなんも話せなくなっちゃって、ヴェロたんにバカにされてた。
そのことで二人で喧嘩したり笑い合ったりするのが好きだったなぁ。
マティアス様のことはもちろん頑張ってた!自分なりに、ちょっとずつだったけど。
しかも毎回緊張しちゃってあんまうまくいってなかったけど…。
ベネディクトは、まじで協力してもらって少しマティアスと話す時間を作ってもらったり、さりげなく私に教えてあげてってアドバイスしてくれたり、まじで協力してくれた。
マティアスにはちゃんと覚えてもらえたし、多分そこらへんの令嬢よりは親しくなれてたと思う。
それと、ベネディクトってばホントにいいヤツ〜!って実感したのは、ヒルデガルド?とか言う人に詰められた日だった。
ベネディクトは私とマティアスをくっつけようと
「平民出身だって王族と結婚できる」とか「頑張ってる子がいい」とか「ハンナはかわいいし優秀」みたいなことをいっばい言ってくれた。
あんまりあからさまに庇ってくれて、マティアスに「ハンナ、オススメですよ〜」感を出すからちょっと恥ずかしくて俯いてた。
それのせいで、ヴェロたんにめっちゃ誤解された。
あたしとベネ様がデキてると思われた。
呼び出されたときにはこれはもう修復不可能なのかなと覚悟してたけど、違った。
「正々堂々と悪役令嬢として略奪する!」 って宣言されたときには笑いそうになってしまった。
そんなん悪役令嬢のセリフじゃないっしょ。
しかもベネディクトが私のことを好きだと思いこんでて、意味不明すぎ。
ベネディクトがどれだけヴェロたんのこと好きか、知らないのかな。知ったらびっくりすんのかな。
だから私も煽って、奪えるものなら奪ってみな!的なこと言って、自分で笑いそうになった。
ヴェロたんはおバカすぎる。
ベネ様どころか、マティアスからも好かれてるのに。
なんで気付かないんだろう。
一ヶ月間マティアスの周りをうろついて分かったけど、マティアスはまじで私に興味がないみたいだった。
というか、ヴェロたんのことを好きだっていうのは、多分ベネディクトに言われなくても気付いた。
話してる時の目や声が他と全然ちがうから。
それを見るたびチクチクしたけど、きっとベネディクトを見つめるヴェロたんを見てるマティアスの気持ちと同じだなって、オソロだとおもって我慢することにしてた。
ヴェロたんに呼び出されたあと、「ホントおバカ」とかつぶやきながら廊下を歩いてたら、ガーデンの横を流れる小さな小川の近くに立っているマティアスが見えた。
チャンス!とばかりに話しかけに行くことにした。
「マティアス様?」
「…!!」
肩がビクッとしたのはわかったけど、返事がなかったのでそっと覗き込んだ。
すると、目を真っ赤にしているマティアスが見えた。
え?!泣いてる?!マティアス様の泣き顔!!!ゲームでも見れなかったのに!!!!きゃわ!!!!
一瞬そう叫びそうになったけど、ぐっとこらえた。
「マティアス様、どうしたの?!」
「ハンナ様…。いや、なんでもないよ。ただ、ちょっと…失恋しただけ。カッコ悪いよね。」
あーヴェロたんに断られたんだな、これは。
「それってヴェロた…ヴェロニカ様でしょう?
無理ですよ、あの子はベネディクト様のことが大好きだから。」
「…君は、ヴェロニカの気持ちを知っていてベネディクトと仲良くしていたの…?
君は…ヴェロニカを裏切ってたの?」
マティアスの瞳に怒りが宿っていた。
「は?ちょっと!ここで怒るの意味不明だし!
だってむしろあたしはベネディクトとヴェロたんをくっつけようとしてたし!!」
「…え?」
「あの二人、ずっとすれ違ってるけど両思いだもん!
ベネディクト様にも色々理由があってあんなかんじだけど、ヴェロたん手放したくないから頑張るって言ってくれてたし!」
「まさか…そんな…。なんで…。」
「しかも怒りたいのはこっちの方だし!!
ヴェロたんが傷ついたタイミング見計らって告ったっしょ。ズルじゃん!ベネディクト様可哀想だよ。あんなにマティアス様のこと考えてたんのに!」
「兄が僕のことを…?
いや、そんなデタラメ言うのはやめてくれ。」
「デタラメなんかじゃない!」
「!!僕は兄が不甲斐ないせいで、とんでもなく厳しい修行にも耐えてる!君はなにも知らないくせに!!」
「なんも知らないのはオメーだわ!!!!」
しまった、ブチギレちゃった。しかも口悪く。
マティアスはびっくりした顔でこっちを見てる。
でも止まらなかった、口が。
「あのさ、ベネ様がなんも考えてないと思う?なんで変わったかわからない?考えたことないの?
ベネ様はね、ずっとマティアス様のこと庇って頑張ってきてるんだよ。でも、パパに罵倒されたり、あることないこと吹聴されてやる気でなくなってんの。
しかもマティアス様がヴェロたんのこと好きって気付いて譲ろうとまでしてたの!あたしが止めたけど!
そういうの全部、なんも気付かないの?!」
「兄さんが…僕とヴェロニカのことを…?」
「それなのにさ、ヴェロたんとベネ様が仲違いしてる間にチャンスとばかりに告っちゃってひどくね?
カッコ悪いのは失恋したことじゃなくて、マティアス様の行動だよ!!
断られて当然だよ、ださいもん!!!」
「…だっ?!」
「あたしはずっとマティアス様はもっと周りの人の気持ちを大事にして、フェアなやつだと思ってた!
あたしが好きになったマティアス様はこんなダサいやつじゃない!!!」
そう言ってその場を走り去った。
「え…好き…?俺を…?」
どさくさに紛れて告っちゃってたけど、興奮してるあたしは全然そんなことに気づいてなかった。




