駆け引きはランチタイムに
「ベネディクト様、ごきげんよう」
マティアスと話してからすぐ、ベネディクトを探して声をかけた。
女子生徒に囲まれておらず一人で佇んでいるベネディクトを見るのは久しぶりかもしれない。
でも、それはきっとハンナという本命ができたからなのね。
唇が震えそうになるのをぐっと堪らえて、言葉を続ける。
「ベネディクト様、今日のランチのご予定はなにかありますか?
もしなければ、私と一緒にどうですか?」
「ヴェロニカからそんな風に声を掛けてくれるのは珍しいね!もちろんいいよ。ハンナも一緒かな?」
「いいえ。私と二人のつもりでお声掛けしましたが…二人だとなにか?」
「え、いや、もちろん二人でいいよ!たまには二人もいいよねぇー。」
私の剣幕で一瞬たじろいで、慌てているように見えた。
ふん、知るものですか。私はもう一歩も引かないんだから。
「よかった、では二人で。
学食の特別室を予約しておりますので、ランチタイムになったらそちらにいらしてくださいね。」
「た、たのしみだなぁ…。」
なにか問い詰められるとおもっているのか、警戒している様子で答えていた。
私はベネディクトに伝えるべきことを何度も反芻して、ドキドキを落ち着かせようと奮闘していると、あっという間にランチタイムの時間を迎えた。
すぐに学食の特別室へ向かう。
ここは、普段大勢の生徒たちが使用する部屋の上にあり、完全個室の広い部屋でゆったりとコース料理が味わえる。
豪華絢爛な装飾品が飾られており、アカデミーであることを忘れてしまうくらいだ。
予約制であり、普段は特別なミーティングの際などに使われ、普通の生徒はなかなか使えないのだが、ヴェロニカが「ベネディクト第一王太子様と大事なお話がある。」と伝えると快く使用許可してくれた。
さすがは一国の王子ね。
足早に向い、重厚な白い扉を開けると、大きな窓のそばにベネディクトが立っていた。
ベネディクトのミルキーブロンドが窓から入る陽の光に透けて、より淡く輝き、印象的な濃紺の瞳はこちらを優しく見つめて細められている。
「あう…。」
控えめに言っても天使…。このまま壁画として飾りたい…。
もうこんな魅力的な人のそばにいられるなら、私は二番目の女でもいいからそばに置いておいてほしい…。
そんな溢れ出しそうな心のつぶやきを抑えて、キリッとした顔に切り替える。
「だめよ、ヴェロニカ。何を言われても怯まずにぶつかるのよ!」
そう小さな声で自分を奮い立たせる。
「やぁ、ヴェロニカ。やっときたね。さあ、ランチを始めようか。」
そう言いながらヴェロニカの前にある椅子をサッと引いてくれた。
「えぇ、ベネディクト様。ゆっくりと、楽しみましょうね。」
そういって私は悪役令嬢さながらの不敵な笑みを浮かべた。




