【幕間 いつか、離れるものだと思っていた】
まだ光るの宮が十歳ばかりのころ。
後宮の奥にて、太后宮は扇の陰から紅蓮の君をじっと見つめ、ふと懸念を口にしたことがあった。
「そなた、大丈夫かえ?
光るの宮の手綱を握れとは言ったが……
光るの宮が、その手を離さなくなることは無いのか?」
その問いに、紅蓮の君は「またまた〜」と呑気に手を振って笑い飛ばしたものだった。
「あはは、まさか!
若君はまだ子供ですよ?
いずれ背が伸びて、素敵なお姫様を見つけて、 私にあれこれ口を出されるのを鬱陶しがりますわ」
男の子なんて、成長すれば親や家庭教師の元から離れていくもの。
いつか「もう子供扱いするなよ」とそっけなく手を振り払って、自分の世界へ羽ばたいていくのだ。
「いつか自分から、私の手を離したくなる時が来ますって」
――来なかった。
十四歳になった光るの宮は、背が伸び、声が低くなり、宮中の誰もが息を飲むほどの美貌と凄絶な覇気を纏うようになってもなお。
『紅蓮の君 ≧ 家族や友人 >(超えられない壁)> この世の森羅万象』
という光るの宮の絶対定義は崩すことができず。
手を離すどころか、指一本すり抜けさせぬほどの強固な力と、妖しく重すぎる熱を帯びた瞳で、
彼女の手を握りしめ続けているのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
光るの宮の重すぎる愛は七歳の頃から変わらず蓄積し続けており。
「紅蓮の君逃げて超逃げて」と、作者は書きながら思ってました……。
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