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【平安転生】ありえない源氏物語 〜桐壺の更衣を救ったら光源氏の愛が重すぎて労基違反です!〜  作者: 揚子江
第二章 日本一モテるのに日本一不憫な東宮

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死にたくなくてオーガニックコスメ作りました

米糠から作ったしっとり洗顔液。


米粉と微粒子の真珠粉を混ぜ合わせたナチュラル白粉(おしろい)。


蜂蜜と紅花を絶妙な比率で合わせた色付きリップ。


そして、髪に極上のツヤを与える一番搾りの椿油ヘアオイル。



(長かった……ここまで来るのに……本当に長かった……!!)



完成したコスメセットを手に、私は遠い目をして青空を見上げた。



正直言って、この『平安オーガニックコスメ』を完成させるまでには、

血と汗と涙の艱難辛苦(かんなんしんく)があったのだ。



そもそも転生して間もない頃、平安時代の伊勢白粉などに、毒性の強い鉛や水銀が当たり前に使われている事実を知り、私は「ヒッ……!!」と盛大に白目を剥いた。



しかも白粉がパッサパサすぎるせいで、うっかり笑った瞬間に顔面のお化粧が『ピキピキピキッ』とヒビ割れて崩れるのだ。


どんなホラーだよ。



(体を蝕むデンジャラス化粧品なんて嫌すぎる!! 死にたくない!!)



というわけで、私は必死でオーガニックコスメの開発に乗り出した。



前世でオーガニック化粧品会社に勤めていた友達から、趣味でノウハウを聞かされていた経験がなければ、絶対に不可能だっただろう。



(ありがとう我が友よ……! あなたのオタク知識が今、千年の時を超えて私を救いました……!)



だが、毎日自分の肌で試行錯誤を繰り返し、お屋敷の片隅で米糠を夜な夜な煮詰める私の姿は、周囲から見れば完全に異常行動である。



「また紅蓮の姫様の奇行が始まったわ……」

「あれさえなければ、どこに出しても恥ずかしくないお美しい姫君なのに……」

「もしや、もののけに取り憑かれているのでは……!?」



真剣に心配した女房たちに、あわや高名な陰陽師(おんみょうし)や祈祷師(きとうし)を呼ばれそうになる始末だった。



その度に、舞や琴、和歌の完璧な披露で「これは雅な創造活動(?)ですわ」と誤魔化し倒した日々。


必死に琴を練習しすぎて弦で指を切り、血が滲んだ小さな傷痕は、今でも指に残っている。


……その傷に気づき、そっと白い絹布を巻いてくれたのは、他でもない父だった。


本来、そういった身の回りの世話は女房がするものだ。


けれど父は、貴族の姫君としてはあり得ない娘の奇行を「おもしろい」と笑い、見逃してくれていたのだ。



太宰府との貿易や宋の最新事情に目を輝かせる私に、たくさんの商談の話を聞かせてくれたのも父だった。


(本当にありがとう、父上……! 『孫の顔が見たいんだが……誰かいい人はいないのか?』なんてプレッシャーをかけてくる点以外は、パーフェクトなお父様ですわ……!)



いいじゃない、我が家にはすでに結婚して可愛い子供(孫)を三人も産んでくれたお姉様がいるのだから!


……まあ、父上が焦る気持ちも分からなくはない。


現代ならいざ知らず、この平安時代において、

二十代半ばまで未婚のままキャリアを突っ走っている姫君など異例中の異例だ。


とっくに結婚して子供がいてもおかしくない年齢である。




だが、今このタイミングで私が宮中からいなくなったら、政治バランスが崩壊する。


これは自惚れでも自意識過剰でもなく、動かしがたい事実だ。




現在の私は、東宮の秘書官(東宮尚侍)という表向きの仕事だけではない。


朱雀帝や桐壺院、さらには太后宮様に対し、派閥を超えた『陰の政治的アドバイザー』を務めているのだ。


もし私が抜け、宮中のパワーバランスが乱れれば。


関白派と太政大臣派の均衡が崩れ、最悪の場合は内戦の引き金になりかねない。



そうなった時、一番苦しむのは、いつの時代も名もなき民草(たみくさ)なのだから。



(現在、二大政党の均衡は完璧に保たれている。


……私がそのように泥沼根回しで仕上げた。)



だからこそ、いま軽率に退場するわけにはいかないのだ。



(まあ……いつかは結婚しなきゃいけない時が来るのかもしれないけれど。)



もしどうしても条件が合う相手がいなければ、政治の基盤が完全に固まった後にあっさり出家して尼になるのも悪くない。



実家の後継ぎ(甥っ子)はしっかり確保してあるから、私一人独身のままいなくなったところで家が絶える心配もないし。



好きでもない変な男と政略結婚させられて、屋敷の奥に閉じ込められるのだけは絶対に御免だ。



(いざとなったら、大宰府から宋に渡って、異国の地で豪商として一財産作っちゃうのもアリね!)


人生の可能性は無限大だ。


それは千年前の平安時代であっても、きっと変わらない。


(幸い、オーガニックコスメの特許(?)事業でガッポガッポ儲けて個人財産は潤沢だし、一人で生きていく経済力は十分すぎるほどあるのよね)


まさかあんなにオーガニックコスメが売れるとは思わなかった。


やっぱり皆、笑うこともできない肌の荒れるお化粧は嫌だったのね。


わかる、その気持ち。




このまま一生独身で、宮廷のエリートキャリアウーマンとして人生を全うするのも粋な生き方だろう。


少し寂しい気もするけれど、自分が納得できる生き方を選べるならそれが一番だ。



――結婚したくなければ、しなければいいのだから!



***




……そんな風に思っていた時期もありました。


ここまでお読みいただきありがとうございます!

紅蓮の君の刻々と迫るタイムリミット(光るの宮の元服)を楽しんでいただけたら嬉しいです。


「面白かった!」「次も気になる!」と思っていただけましたら、

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次回は本日【13:00】に更新します!

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