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【徒然妖怪譚】私とトウフの奇妙な共同生活  作者: 只野誠
【第十章】私と脚フェチと上京した幼馴染的な存在が会わないうちになんとやら

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【第十章】私と脚フェチと上京した幼馴染的な存在が会わないうちになんとやら【九十三話】

「は? え? なんだ、誰だ、これは……」

 結局、俺は唐傘お化けのいる場所へと人間の手で運ばれてきたんだが、そこにいる変わり果てた唐傘お化けに絶句していた。

 なんだ、これは、誰なんだ。

 風合いのよかった傘は、ピンク色のけばけばしいビニールとなり、さらにそこに厚化粧。

 まつ毛なんかがウニのようにトゲトゲしてやがる。

 まあ、脚は相変わらずいいが、素足ではなく薄い布を、ストッキングっていうのか? それを履いて、室内だというのにサンダルまで履きやがる。

 俺の知っている唐傘お化けではない。

 誰なんだ、これは?


 呆然自失な俺に対して、唐傘お化けの奴はめんどくさそうに、

「誰でありんすか? この人を連れて来たのは?」

 とそう言った。

 その声は確かに俺の知っている唐傘お化けの声だ。

 けど、俺は、こんなものを、こんなになった奴を、唐傘お化けとは認められない。

「オマエは誰だ?」

 そう言って、唐傘お化けを睨む。

 だが、睨むと分かるんだ。

 コイツが唐傘お化けだってことが。

 脚の絶妙なライン。形、流線形の美しさ。

 それらが、コイツを唐傘お化けだって、告げてくるんだ。


「はぁ…… カラカサでありんす」

 唐傘お化けは、大きなため息を隠そうともせずした後、いけしゃあしゃあと唐傘お化けだと言いやがった。


「オマエが? なんで、こんな? あの古くも奥ゆかしい傘はどこへ? なんだ、そのケバケバしい色の傘は!?」

 ピンク色で透き通ったビニールの傘に変わっていやがる。

 なんなんだ、この風情も何もない傘は。


「通販で売っていたビニール傘のものと付け替えただけでありんす」

 何を言ってやがる!

 物の価値が分からないのか?

 そもそも物の妖怪がそんなことして平気なのか?

 そんなことしたから、唐傘お化け、おまえは変わっちまったっていうのか?

「なぜ、なぜそんなことを? それになんだ、その脚は!?」

 な、何とけしからん脚なのだ。

 生足もよかったが、ストッキング? っていうのか? ま、まあ、悪くはない、そこだけは悪くはないぞ!

 それだけは認めてやらんこともない。

 だが、それ以外はおまえを唐傘お化けだなんて認められないぜ!


「ストッキングと部屋用のサンダルでありんすが? 何か問題でも?」

 そう言って唐傘お化けは傘を開いて、魅惑の脚を見せてきやがる。

 な、なんだよ、俺を誘惑しようっていうのかよ。

 そんな手に乗るわけがない!

 そもそも、唐傘お化けはそんなことしない!


「オマエ、本当にあの唐傘お化けなのか!?」

 もう一度それを確認させてくれ、オマエは本当にあの奥ゆかしい唐傘お化けなのか?

「しつこい人でありんすね」

 だが、目の前のコイツは俺のことなんか見えてないかのようにそう言い放った。


「やっぱりお前の脚のファンか? そうなのか?」

 そこへ俺をここまで連れて来た人間、確かカズミとかいう名の女が話に入ってきやがる。

 邪魔をするなよ、今大事なところなんだ!


 けど、唐傘お化けは俺を無視して、人間の女の方に向き直り答える。

「ファンというよりストーカーの類でありんす。この方がいるから、あちきは妖怪連合を逃げ出してきたというのに」

 そして、衝撃的なことを言いやがった。

 俺がいたから逃げ出した?

 なんだよ、それ、どういうことだよ!?

 訳が分からない!


「だってよ、チョウチン! お前、ストーカー呼ばわりされてるぞ」

 カズミとかいう名の女が俺に向かい、ニヤニヤしながらそんなことを言ってくる。

 ストーカー?

 俺が? 俺がストーカーだっていうのかよ?

 誰がそんなことを言ったっていうんだ。

 俺の知っている唐傘お化けがそんなこと言うわけない。

 俺とオマエはいつだって親友だったじゃないか!?


「な、なんでだよ! 俺とオマエは親友同士だろ!?」

 俺がそう言うと、唐傘お化けは冷めた目で、

「親友? 親友でありんすか? 親友ってなぁ、人の足をじろじろと見てくるものなんでありんすか?」

 と言ってきた。


 俺がジロジロ見ていたことはばれてたんだな。

 そりゃ、俺もオマエも目玉は一つ。

 大きな目玉だ。

 どこを見ているかなんて丸わかりだもんな。

「そ、それは……」

 チクショー、そう言われるとなにも言い返せねぇ!


「それに、あちきはあんたさんに足を舐められたゆえ逃げて来たんでありんすよ」


 それは……

 その……

 俺には舌しかないわけで、自由に動かせるのが、その、舌しかなかっただけであって……


「あれ? カラカサさん、ボクを心配して…… ってことじゃ……」

 豆腐小僧がそう言って呆然と唐傘お化けを見ている。

 なんでぇ、そんなことで。

 呆然としたいのは俺の方だ!

 けど、唐傘お化けは優しい目をして、

「人にはいろいろな理由がありんす。それもまた嘘ではありんせん」

 と、豆腐小僧を言いくるめる。

 ただの言いくるめだな、うんうん。


 けど、なんでこんなことになったんだ。

 俺の…… 俺の唐傘お化けがなんで、こんなことになっているんだ。

 誰だ、俺の唐傘お化けをこんなことにした奴は!

「俺の唐傘お化けが…… ちょっと目を離したすきに…… こんな、こんなことに!? 人間、オマエの影響か!?」

 そうに違いない!

 人間の仕業だろ!?

 このカズミとかいう人間の影響を受けて…… でも、このカズミっていう人間、別にけばけばしくはないな。

 どっちかっていうと、芋っぽいな。なんかジャージ着てるし。


「私? 私は何もしてないぞ。トウフの稼ぎで勝手に買ってるだけだしな」

 トウフ?

 豆腐小僧のことか?

 豆腐小僧の稼ぎ? 何のことだ?

 え? 待て、そうなのか? 唐傘お化けと豆腐小僧がそんな仲になってたっていうのか!?

 つまり、このケバケバしい唐傘お化けはすべて豆腐小僧の趣味ってことなのか!?

「トウフ? 豆腐小僧の影響なのか!? 純情そうななりをしやがって、こんなけばけばしいのが好みなのか!?」

 オイ! どうなんだ、答えろ!

 答えやがれよ!


「え? ボクの好みですか…… え? え!?」

 俺にそう問い詰められた豆腐小僧は、驚いた後カズミとかいう女の方を向いた。

 あれ? なんか様子が違うな。

 これ、あれだ。ハハーン? 豆腐小僧は、カズミとかいう人間にホの字って奴だな?

 ということは、唐傘お化けとは無関係? なのか?

 まあ、よくよく考えれば、豆腐小僧はその名の通り小僧だしな。

 こんなけばけばしい趣味なわけはないか。


「いやぁ…… トウフ。私を見てどうした?」

「い、いえ、なんでもないです!」

 なんだ、なんだぁ、女の方も気づいてないのか?

 ハッハーン? オネショタって奴だろ?

 俺、知ってるぜ?


 ニヤニヤとカズミとかいう女と豆腐小僧を見ていると、大きなため息をつき、

「はぁ…… トウフさんは関係ありんせん。これはあちきの趣味でありんす」

 唐傘お化けがそう言った。


 は? 自分の趣味?

 唐傘お化けの趣味だっていうことなのか?


「お、俺の唐傘お化けはどこへ!?」

 あの奥ゆかしい唐傘お化けはどこへ行ったんだよ!

 けど、

「あんたさんのものでありんしたことは一度もありんせん」

 唐傘お化けは怒ったように、俺に向かいピシャリと言ってきやがった。

 な、何言ってんだよ、唐傘お化け!

 俺とオマエの仲じゃないか!!


「うーん、連れて来て正解だったな、トウフ」

 そう言ってニヤニヤとカズミとかいう女は俺のことを見下していやがる。

 オマエだって、豆腐小僧の気持ちのこと気づいてないじゃないか!?


「え? そ、そうですか? これ修羅場って奴じゃないんですか?」

 豆腐小僧は目を手で隠しながらそんなことを言っている。

 それに対してカズミって女は、あ、缶ビールまで開けてやがる。

 それを飲みながら、ニヤニヤと楽しそうに、

「他人の修羅場程面白いもんはないだろ?」

 と、そう言った。

「えぇ……」

 豆腐小僧はそう言って引いた顔をしている。







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