【第九章】私とお猫様と例のアレ【九十話】
私は口裂け女。
昭和を代表する妖怪の一人、デスッ!
比較的新しい妖怪と言えど、私もすでに時代遅れ。
人の世の時の流れは早いこと早いこと。
しかも近頃では、夏でもマスクをしている人も多く、そもそも私という存在自体を気づかれない。
気づかれなければ存在してないとも同義なんデスッ!
つまり、私を口裂け女かもしれない、と少しでも考えている人間にしか私は干渉できないのデスッ!
なんだかしらないでデスが、真夏だっていうのにどいつもこいつもマスクをつけられていては、私のアイデンティティがなくなるのデスッ!
だから、妖怪連合という組織に入ったのデスが、先輩方、どんどんいなくなっているんデスよね。
なんなんすか、妖怪連合って。
何もしてないじゃないデスか?
所詮、時代に取り残された妖怪達デスね。危機感がないんデスよ!
まあ、それは私もなんデスが。
とりあえず、私もネコマタパイセンを頼り、その隠れ家へ行こうと思っているのデスが……
道が通れません。
見えない何かがあるんデスよ。
いくら叩いても蹴っても、見えない壁があってそれ以上進めないのデスッ!
パイセンたちはヌリカベの仕業って言ってたのデスよ。
で、その対処方法、見えない壁の足元を払う、って方法を試したんでデスよ。
効果全くないんデスよね。
何か硬い見えないものがあるのはわかるんデスが、それを踏もうが叩こうがまるで効果がないんデスよね。
ヌリカベパイセンではなく、違う妖怪なんデスかね?
そもそも私、ヌリカベパイセンのことを見たことないんデスよね。
仕方がないので、私の必殺武器であるハサミで、この壁を切り裂いてやるデスよ!
私は見えない壁にハサミを突き立ててやるデスッ!
刺さるような感触が手にはしっかりと残ります。
手ごたえは残るのデスが、壁を切り裂くほどには至らないようデスね。
さすがはヌリカベパイセン。
いえ、この妖怪がヌリカベパイセンとは限らないのデスが。
何せ見えませんし。
どうした物でしょうか……
「え? どういうことだよ、カラカサ」
もうこのアパートに妖怪がくるようなことはなくなったって話だろ?
それなのにヌリカベが襲撃を受けたとカラカサに伝えて来るってどういうことだよ。
「あちきにもようわかりんせん。ヌリカベさんが女の妖怪にハサミで刺されたと……」
ハサミで刺された?
随分と恐ろしい妖怪だな。
何の妖怪だ?
けど、ハサミで刺されたっていうのなら、ヌリカベの奴も無事じゃないんじゃないのか?
「で、ヌリカベは無事なのか?」
そんな危険な妖怪に来られたら溜まったもんじゃないな。
ヌリカベが無事だといいんだけど。
「喜んでやした」
あー、うん、この件には触れないほうがいい気がするな。
どんな奴か見たことないけど、どんどん道を踏み外してないか? ヌリカベさんよ。
「あっ、そう…… けど、もう妖怪は来ないんじゃないのかよ」
ネコマタの話では、妖怪連合にも話をつけて来たってことだったよな?
「野良の妖怪かもしれんせんし」
そもそも、妖怪連合の方がイレギュラーで、妖怪はみんな野良なんだよな、本来は。
だから、妖怪が集まっているこのアパートのほうが異常事態なんだよな。
それは私でも理解できる。
「そんな偶然あるのか?」
だからこそ、新しいのらの妖怪が訪ねて来るのはおかしいだろう?
「主は妖怪と縁を結びすぎてやすゆえ、偶然とも?」
「私が悪いってこと?」
妖怪が妖怪を呼ぶって感じか?
ええー、それは……
そもそもよくよく考えれば、トウフ以外いらなくないか?
いや、アライの奴にはいてもらわないとまずいか、そうだよな。
私の妄想が進まなくなるしな。
「しいて言えば、このアパートでありんすかえ?」
あっけらかんとカラカサが言っているけど、お前もその原因の一つだろう?




