【第九章】私とお猫様と例のアレ【八十九話】
「妖怪連合に報告してきたニャ。ここはうちのものになったから、手を出すなとも言っておいてやったニャ」
ふふん!
うちは仕事をちゃんとする猫ニャ。
これくらいのことやって当然ニャ!
「おお、ありがとうよ。これでもう妖怪はやって来ないってことでいいんだよな?」
人間の雌も感謝しているニャ。
「当たり前ニャ。うちの縄張りニャ!」
うちの縄張りに手を出す奴なんていないニャ。
いないよニャ?
「じゃあ褒美だぞ。この間は肉系の味だったけど、今日は魚介系だぞ」
そう言って人間の雌がムチュールの封を切るニャ。
何とも言えない香りがうちを誘ってくるニャ……
「お魚ニャ!?」
お肉もいいけど、うちはお魚も好きニャ!
「まずはマグロとカツオどっちがいい?」
「マグロニャ!」
一瞬カツオ節のことが脳裏をよぎったけど、マグロニャ。
魚の中で一番うまいニャ!
まあ、カツオも悪くないニャ。
後で食べてやるニャ!
「カツオ節からカツオって思ってたけど、マグロなのか」
それは間違ってないニャ。
以前のうちはカツオ節が好きだったニャ。
それはともかく、差し出されたムチュールを舐めるニャ。
相変わらずなんていう美味ニャ!
この間の肉も良かったけど、マグロは格別ニャ!
「うちはトロが大好きニャ!」
ムチュールを舐めつつ、人間の雌にも答えてやるニャ。
でもトロを食べてから、うちはトロの虜ニャ!
そして今はムチュールの虜ニャ……
ムチュール味のムチュールはないのかニャ?
でも、確かにマグロ味だけど、あんまりトロの味はしないのニャ。
これならカツオにしとくべきだったニャ?
ニャ。
でも、舐めるのが止められないニャ!!
これはこれでおいしすぎるのニャ。
「トロとかどこで知ったんだよ」
トロとか、懐かしいニャ……
今はムチュールニャ。
そう言えば、うちはどこでトロを食べたんだニャ?
あれは確か夜の通りだったニャ。
綺麗な光が見えていたニャ。
そこを通りかかった酔っぱらいが包みを落としていったニャ。
あれがうちとトロの出会いだったニャ。
しかし、このムチュールは更にその上を行くニャ。
マグロ味があるなら、トロ味があってもいいはずだニャ?
「たまにくれる人間がいるニャ! トロ味のムチュールをよこすニャ!」
そうだニャ!
よこすニャ!
「まあ、マグロ味ってあるけど、違うのか?」
「一緒なのかニャ?」
トロもマグロって言う話を聞いたことはあるニャ。
でもうちに言わせれば別物だニャ。
「部位の名称だったか? とにかく脂がよく乗った部分をトロ、特に脂がのっているのを大トロって言うんだよ」
「よくわからんニャ。とにかくよこすニャ!」
マグロもトロニャ?
大トロもトロなんだニャ?
よくわからないけど、うちの知っているトロをよこすんだニャ!
「トウフ、お前もあげるか?」
人間の雌がそう言ってムチュールをうちの届かない高さにあげたニャ!
ニャンてことをする奴なんだニャ!
早く舐めさせるニャ!
ムチュールを下ろすんだニャ!
「はい! やらせてください! いろんな味があるんですね、ホタテ味とかも美味しそうですね」
そう言って豆腐小僧は人間の雌が差し出したムチュールを受け取らずに、まだ袋に入っている方を見ているニャ。
その袋にはムチュールがいっぱい入ってるのかニャ?
気になるニャ!
「なんニャ! うち、ホタテとか食べたことないニャ!」
ホタテって何ニャ!
それも食べてみたいニャ!!
「まあまあ、全部おまえののだから焦るなって。ただ一日に一、二本までだぞ」
全部うちのニャ!
当たり前ニャ!
けど、なんで二本までなんだニャ!
「なんでニャ!」
「ムチュールはオヤツで餌じゃないからな」
これがオヤツって奴なのかニャ?
確かに人間もオヤツが大好きって聞いたことあるニャ。
なるほどニャ。
「な、なるほどニャ。これの他に猫缶もくれるのかニャ?」
これの他に猫缶もくれるということかニャ?
なら、もう妖怪連合に顔を出さなくてもいいニャ。
ここはうちの縄張りだし、ここに引きこもるニャ。
「カリカリなら買ってきたぞ」
そう言って、人間の雌はうちにカリカリの入った…… 猫缶じゃないニャ!?
普通の袋ニャ?
うちをだましたのかニャ?
でも、いつものカリカリの絵だニャ?
容器が違うだけなのかニャ?
「猫缶のカリカリなのニャ? その袋の中はカリカリなのニャ? それに、ここは涼しいし天国だニャ! それよりも早くムチュールをよこすニャ!」
「ほら、トウフ。これをもって上げるんだぞ」
「はい! どうぞ、ネコマタさん!」
「んで、なんで俺様のカフェでネコマタの餌をやってんだよ」
「猫カフェでいいじゃないか」
猫カフェって何ニャ?
「俺様もそれを調べたんだ! 猫カフェじゃあんまりコーヒーは飲まないそうじゃないか!」
コーヒーって何ニャ!
まあ、うちはムチュールがあればいいニャ!
これは至高の食べ物だニャ。
「どこで調べたんだよ。でも、カフェはカフェだぞ」
「そ、そうか? まあ、いいか」
小豆洗いは相変わらず馬鹿だニャ。
人間の雌にいいように言いくるめられているニャ。
「折角調べたのにそれでは意味がないのぉ」
呆れたようにぬらりひょんもそう言っているニャ。




