【第九章】私とお猫様と例のアレ【八十八話】
「行ってきたニャ」
妖怪連合の隠れ家に戻ったうちは報告を済ませたニャ。
まだ夕方だったからか、隠れ家にいた妖怪は一人だけだったニャ。
夏だというのに、マスクとコートを着込んでいる雌の妖怪ニャ。
まあ、隠れ家はエアコンとかいうもので快適な空間になっているけどニャ。
外でそんな格好で出歩いていたら、ただの変態ニャ。
「おお、さすがはネコマタさん。で、どうだったんですか?」
その妖怪がうちの背中を撫でながら聞いてくるニャ。
なんで、人型の雌はみんなうちの背中を撫でたがるんだニャ?
「お前は誰だニャ?」
今まで気にしていなかったけど、報告するからには名前くらい聞いとくニャ。
うちはしっかり者なんだニャ。
「私デスか? 私は昭和を代表する妖怪の一人、口裂け女、デスッ!」
口裂け女かニャ。
確かに聞いたことあるニャ。
ちょっと前まですごい勢いだった気がするけど、今は落ち着いているのニャ。
まだまだ歴史の浅い妖怪ニャ。
でも、うちに猫缶をくれる奴ニャ。
ということは悪い妖怪ではないニャ。
「猫缶の人はそんな名前だったのかニャ」
「はい」
口裂け女はそう言って頷くニャ。
うちは勿体つけるニャ。
苦労して得て来た情報ニャ。
少しくらい勿体つけても罰は当たらないニャ。
「結論から言うとだニャ」
「はい」
一息ついてから頭の中でまとめるニャ。
えっと、ムチュールのためには西瓜侍とスネコスリのことは目をつぶらないといけないニャ。
「あそこはいいところだニャ。はじめはうちも反妖怪連合の集まりかと思っていたニャ」
そうなると、ムチュールをくれるいいところだニャ。
あそこもエアコンが効いていて過ごしやすかったニャ。
「反妖怪連合!?」
フフン。
口裂け女も気になるのかニャ?
でも反妖怪連合は存在していなかったのニャ。
「けど違っていたニャ」
「では、どういった場所なんデスか?」
「天国だったニャ」
うちはムチュールのあの味わい深い味を思い出しながらそう言ったニャ。
あれはまさに天国の味ニャ。
一度味わったら、猫缶だけでは満足できなくなったニャ。
「天国!?」
口裂け女が驚いた顔をしているニャ。
何を驚いているのかニャ?
「そこにみんなもいたニャ」
「それは…… もう行方不明になった妖怪達はこの世にいないと? そう言うことですか?」
何を言っているんだニャ?
なんでみんなが死んだことになっているのニャ?
「いるニャ」
「え? いるんデスか?」
当たり前ニャ。
みんなアパートで元気に過ごしていたニャ。
口裂け女は何を言っているのニャ?
「それともうあのアパートには来るな、って言ってたニャ」
妖怪がこれ以上来るのは迷惑だし、もう空き部屋もないらしいニャ。
「それは誰がデスか?」
「人間の雌ニャ」
誰って、ムチュールの人ニャ。
はじめはいけ好かない奴だと思ったけど、ムチュールをくれるいい人ニャ。
勘違いしていたニャ。
「人間の女…… デスか?」
「一番偉そうにしてたニャ」
なんならぬらりひょんよりも偉そうだったニャ。
なんであんなに偉そうにしているのかニャ?
「それは、妖怪ハンターとかそういった輩なのデスか?」
「違うニャ」
あれはただの人間ニャ。
そんな素質もないニャ。
「違う…… のデスか?」
「なんだかんだでみんな仲良く暮らしていて、あそこは天国だニャ」
あの人間の雌もうちには甘々だニャ。
それにムチュールもまたくれると約束しているニャ。
つまり、あそこに行けばムチュールがもらえるんだニャ。天国だニャ。
「それは…… あのアパートは極楽浄土へと繋がっている、ということデスか?」
「そう思ってもらってもいいニャ。あそこは理想郷なのかもしれないニャ」
極楽浄土? 天国のことかニャ?
まあ、違いはないニャ。
「では…… どうしますか? ぬらりひょん様も居なくなった今、誰がこの妖怪連合を指揮するのデスか?」
猫缶をくれるから、うちはいるだけだニャ。
妖怪連合がこれからどうするかなんて、うちには興味ないニャ。
それに今はムチュールがあるニャ。
猫缶よりもムチュールだニャ。
それに、
「ぬらりひょんはいたニャ」
この隠れ家にいる時よりも、なんか伸び伸びとしてた気がするニャ。
「ぬらりひょん様はご無事だったのデスね?」
なんでそんな心配をしているのかニャ?
あのアパートはヌリカベが守っているから安全だニャ。
そう言えばなんか言ってた気がするニャ?
「暴動がどうとか言ってたニャ。ついでに、あのアパートはうちの縄張りになったニャ」
そうニャ。
あのアパートはうちの物ニャ。
ムチュール天国ニャ!
早速明日も訪ねていくニャ。
「え? どういうことデスか? ぬらりひょん様は何らかの暴動を恐れ、隠れ家に避難している? ということデスか?」
そんな話だったかニャ?
なんか違う気がするニャ。
「なんだか要領を得ない話でよくわかりませんが、ぬらりひょん様が身を隠しているのは正しいように思えますね」
誰かが、口裂け女とは違う誰かがそう発言したニャ。
他にも妖怪がいたニャ?
うちも気づけなかったニャ。
まあ、妖怪ならそんな奴もいて当然ニャ。
「つまり、この妖怪連合に何か重大な危機が訪れるということデスか!?」
なんか目を血走らせて、口裂け女がそう言ったニャ。
それはそうと、報酬の猫缶はまだもらってないニャ?




