【第九章】私とお猫様と例のアレ【八十七話】
「で、結局ネコマタも妖怪連合を抜けるのか?」
小豆洗いがそんなことを聞いてくるニャ。
何を言っているんだニャ?
なんでうちが妖怪連合を抜けなくちゃいけないんだニャ。
「抜けないニャ…… ちゃんと戻ってここのことは報告するニャ」
うちがそう言うと、幾人かの妖怪達がビクッと反応したのが分かったニャ。
でも、今のうちはムチュールに夢中だニャ。
誰が反応したのか気にする暇はないニャ。
質問に答えただけでもありがたいと思うのニャ。
「私は助かるけど、ぬらりひょんの爺さんはいいのか?」
うちの背中を撫でながら、人間の雌がそんなこと言ったニャ。
「まあ、構わんじゃろ。ここにいれば大概の妖怪達はヌリカベが防いでくれるからな」
ぬらりひょんは特に動揺もしないで、そんなことを言ったニャ。
ここは安全なんだニャ?
安全でムチュールがある場所? もしかしてここは天国なのかもしれないニャ?
「妖怪連合で暴動が起きるって言うのは?」
なんで暴動が起きるんだニャ?
人間の雌は何を言っているんだニャ。
「その場にワシがおらなんだなら、勝手にしてくれてかまわんよ」
それは少し困るニャ。
妖怪連合がなくなれば、誰がうちに猫缶をくれるんだニャ?
「巻き込まれたくないだけかよ」
「そうじゃとも。何か問題でもあるか? ワシとて担ぎ上げられただけじゃ」
ぬらりひょんが総大将と思ってたけど、違うのかニャ?
「いやないな」
人間の雌がぬらりひょんに同意しているニャ。
でもなんで妖怪連合で暴動が起きるんだニャ?
聞きたいけど、ムチュールを舐めるのをやめられないニャ!
「ぬらりひょん様はここでご滋養ください! オイラが面倒を見ますので!」
小豆洗いがそんなことを言っているニャ。
なんでコイツ、ぬらりひょんにそんなに下手に出てるんだニャ?
ぬらりひょんがつけあがるだけだニャ。
そこへ人間の雌が、
「俺様な?」
と、力強くいうニャ。
な、何ニャ、この有無を言わさない圧は、なんなんだニャ!?
本当にこの人間は人間なんかニャ?
「あー、分かってるよ。本当にしつこい奴だな」
小豆洗いは慣れているのか、あんまり相手にしていないみたいだニャ。
うちだったら、あんな圧でせめられたら逃げ出していたところニャ。
あっ、なんてことだニャ!
もうムチュールがないニャ!!
すべて舐め切ってしまったニャ。
もっと舐めていたいニャ……
「そんなことよりも、もうムチュールはないニャ?」
うちがそう言うと人間の雌がうちを抱き上げて言うニャ。
「そもそも試供品だったしな。気が向けば買って来てやるよ」
と。
なんだニャ。
普通に買えるものなのかニャ? こんなにおいしい物ニャのに?
でも、それなら安心したニャ。
でも、さっき小豆洗いが、
「小豆洗いは作れないのかニャ?」
作れるとかそんなことを言っていたニャ?
うちは聞き逃さなかったニャ!
「よくわからない材料があるしな。どうだろうな」
なんだ、うちを期待させておいて作れそうにないニャ。
ダメダメな奴だニャ。
「ただ混ぜて煮るだけじゃ同じものは作れないぞ」
と、人間の雌が更に追い打ちするニャ。
期待を持たせるような奴にはもっと言ってやれだニャ。
「そうなのか?」
と、小豆洗いは懲りた様子が見えないニャ。
お前はもっと反省するニャ!
「それにそんなに高くもないしな」
「そうかニャ。じゃあ、また来てやるニャ!」
それまでにムチュールをいっぱい買って置くことじゃニャ。
「次来るときはヌリカベには伝えて、通れるようにしといてやるからな。他の妖怪連中にはもうこのアパートに来るなって伝えて置いてくれよ」
そう言って人間の雌はうちを床に降ろしたニャ。
「随分とネコマタには優しいな」
小豆洗いが妬ましそうにそんなことを言うニャ。
当たり前だニャ。
猫はかわいがられるものだニャ。
「これでここも猫カフェだな」
さらに人間の雌がそう言ったニャ。
つまりここはうちの物ってことかニャ?
人間、分かってるじゃないかニャ。
うち、覚えたニャ。
今日から、ここがうちの新しい縄張りだニャ。
「猫カフェ? なんだそれは?」
と、キョトンとした顔で小豆洗いが言うニャ。
うちにねぐらを取られたとも知らずにのんきだニャ。
「たまには自分で調べろよ」
人間の雌の言う通りだニャ。




