【第十一章】私と友情とやっぱり脳破壊で新しき道【百二話】
いつものようにトウフと買い物ついでに夕方の散歩をして帰ってくると、アパートに続く道に何かがいた。
何というか、分かりやすい。
ふんどし姿の子供だ。
まあ、なんだ。その格好を見れば、それが妖怪だと一目でわかる姿をしている。
強いて言えば、小鬼って感じか?
それが道の真ん中で何もない方向に、なまりの強い言葉で話しかけている。
うーん、ヌリカベの奴、ただのフェチ妖怪じゃなくて、ちゃんと働いていたんだな。
報酬のほうは、ちゃんと美脚のカラカサに払わせるからな。
「んー、トウフ。道を変えようか。変な輩がいるぞ」
とりあえずは小鬼でも妖怪は妖怪だ。
最近、変な妖怪が多いし、トウフへの悪影響が懸念される。
注意しないとな。
「いてもヌリカベさんが通しませんよ」
トウフは私を見上げてそんなことを言ってくる。
少しは前見て歩いてくれ、トウフ。
私は心配になるぞ。
それにそんなにトウフに見られると私も照れてくるし……
「いや、今まさにヌリカベに止められているところだぞ」
そう言って私は買い物袋を持った手で指さす。
ついでに逆側の手はトウフと手を結んでいるから指させないぞ。
小さくも柔らかく温かい手だぞ。
「あ、なるほど…… って、あれは妖怪じゃないんですか? ですよね!?」
トウフも一人で虚空へと向けて喋っている小鬼の姿を見てそう思ったようだ。
「格好からしてそうだな。知り合いか?」
今どきふんどし一丁なのは、まあ、そうそういないよな。
妖怪くらいなもんだよ。
というか、ふんどしの妖怪多いな。
いや、それ以前にそもそも妖怪が普通にいるこの環境に私は慣れすぎなのか?
「いえ、見たことないですね。妖怪連合の人じゃないと思いますけど」
ふむ?
妖怪連合の妖怪じゃないのか。
野良妖怪?
いや、野良妖怪って、そもそもなんだよ。
けど、小鬼か。
背の高さ的にはトウフやアライとそう変わらないな。
後ろ姿だけで判断はできないが、私の守備範囲か?
顔を見てみないことには判断できないな。
「んー、一応は範疇か? いや、背が低いだけか? ここからじゃ判断できんな。やっぱり顔を見て判断しないとな」
「なんのですか?」
「え? なんのだろうね? トウフは気にすることじゃないぞ」
トウフは純真無垢なそのままでいてくれ。
まさに真っ白な豆腐のようにな。豆腐小僧だけに。
私のように薄汚れてはいけない。
「そうやって、カズミさんはすぐボクのこと、のけ者にするんですから!」
そう言って怒るトウフも可愛いぞ。
怒られているこっちがじんわりと笑顔になるくらいにはな。
「いや、そう言うわけじゃなくてな……」
私とトウフがそんなたわいもないやり取りをしていると、不意に、だけどのんびりとした、訛りの強い口調で声をかけられる。
目の前には少しどんくさそうな小鬼がいた。
いつの間に近づかれた?
けど、まあ、顔の造りは悪くない、か?
「すまんのぉ、おめ、妖怪だな? 豆腐小僧だべ?」
そいつはトウフのことを一目で妖怪、しかも豆腐小僧と見抜いてきたんだよな。
あれ? もしかして、侮ってはいけない妖怪…… なのか?
今までどいつもこいつも、侮ってくれっていう妖怪ばっかりだったからな。
少し気が抜けていた?
「え? はい、豆腐小僧のトウフです!」
トウフは丁寧に頭を下げて挨拶をした。
「オラはクネユスリだぁ」
そう言って小鬼の方も頭を下げた。
礼儀正しい奴だな。
けど、クネユスリ?
聞いたことのない妖怪だな。そもそも私は妖怪に詳しいわけでもないしな。
「どうも、よろしくです」
トウフがもう一度頭をペコッと下げてから、
「やっぱり妖怪かよ。やっぱり妖怪連合なのか?」
と、私は疑問を口にした。
「いや、オラは違うんだ。小豆洗いが行方不明になったど聞いでけで来だんだぁ」
その言葉を聞いた私の中で何かのスイッチがオンになった。
これは…… 伝説のショタの三角関係って奴か!?
いや、何が伝説かはわからんが。
トウフとアライの友情、そして友情以上への関係へ発展……
そこへ現れるアライの幼馴染……
良い。これはよい展開じゃないか?
なんか、ワクワクしてきたぞ!
「ああ、小豆洗いの関係者か」
私は冷静さを保ちながらそう言ったが、正直興奮を隠せているとは思えない。
顔が自然と崩れ、綻んでいくのが自分でもわかる。
「オラ、小豆洗いの奴ど組んでけれぐふと驚がせでだんだぁ」
やっぱり幼馴染だな!
元鞘だな!!
けど、訛りが強くてわけがわからんな。
にしても、どうするよ、トウフ!
おまえにライバルが現れたぞ!!
いや、まあ、私の妄想ではともかく現実では、トウフとアライはただの友人でしかないけれども。
それを考えると、先にライバル登場かよ!
もう少しトウフとアライの仲が進んでから登場してくれよ!!
「ああ、うん、つい最近、似たような奴がやって来ていたな」
実はこいつも変態妖怪でアライに嫌われてたりはしないよな?
チョウさんみたく。
そう言えば、チョウさん売れてたな。
良かったな、新しい行き先ができて、私も安心だぞ。
いつまでも売れ残っていたら、私の心が痛むからな。
「いやぁ、無事だど聞いだんだが、折角遠ぐまで来だんで、小豆洗いに顔だげでもと思ったんだがなぁ」
まあ、随分と遠くから来たんだろうな。何か妙になまっているし。
どこの方言だ?
「カズミさん! 会わせてあげましょうよ!」
トウフは目を輝かせてそう言ってくるんだけどさ。
これ大丈夫か? アライに会わせて。
面白そうではあるんだよなぁ。
「んー、会わせていいのか? これ? チョウさんみたくならないか?」
なんとなく不穏な空気に私はワクワクが止まらないぞ。
まあ、トウフの教育に悪そうなら、退場してもらおうかな。




