〜そして、陸へ~13.
ローラは、なんの思惑も持たず、つい言葉にしていた。
どこに行ったのか、次会えるのはいつなのか。
そういった趣旨のことを聞きたかっただけだったのだが、リーアの様子を見て、口をつぐむ。
リーアに厳しい目を向けられたからだ。
「ローラ様。あの方を不躾に愛称でお呼びしてはいけません。ウィルフリード王子殿下、ですよ。いくら記憶に曖昧なところがあると言っても、あまり馴れ馴れしい態度をとることのできないご身分にあることをご理解ください」
『は、はい……』
ウィルフリード王子殿下……。うええ、今の私じゃあ一息に言えるかどうかも怪しいわ……。
それでも、今聞いたことを反芻するように、一生懸命思いかえす。
リーアは、黒髪の娘の素直な様子に無駄に強く言うことをやめたらしい。
「ローラ様。今、この王宮は華々しい宴が毎日のように催されております。未だ一人もお妃様を持たぬ王子殿下の、花嫁を選ぶためです。……あなたに言っても仕方のないことですが、その機に乗じるように胡乱な輩も隙あらばと王子殿下を狙っているのです。……そうです。ローラ様の引っかかった罠も、です」
ローラは自分を指差し、こくこくと頷く。リーアの言いようは大概ひどいが、まだ人と話すこと自体に慣れていないローラには分からない。
「その宴のため、こちらの宮は非常に手薄です。そんな時に、胡散臭い人間にはいてほしくないのが、皆の本音です。ですがあなたは、王子殿下自ら連れて来られた客人となっています」
返事をしようにも声が出ないため、引き続きこくこくと頷く。
「はっきり言って、皆疑っていました。けれど、ここまでのあなたの様子をみる限り、それは時間の無駄だと思い直しました。まず死にかけの状態で運び込まれ、薬を盛られて声は出ず、足も弱っているのかまともに歩けず、挙げ句に王子を狙った罠に掛かってまた死にかける……。刺客と言うにはベタ過ぎます」
ーー聞いているだけで耳が痛い……。
ヴァリーの思惑通りとも言えるが、自分も不運続きのようだ。
「そんな中、絢爛豪華な花嫁候補の方々を差し置いてこの宮におかれた以上、あなたにはそれ相応の振る舞いをしていただきます」
……あれ、なんだか雲行きが変わってきたような……?
胡散臭い客人に対する文句だったはずが、いつの間にか、そばにいることを認められている以上、王子に恥をかかせるなという、お説教になっている。
『……え?それ、相応……?』
ワケも分からず、上から下までリーアに検分され、自分でも自分を見下ろす。
「身体は医師様の治療の前に清拭させていただきましたが、髪は櫛ってある程度汚れを落としただけです。折角の美しい髪が塩をふいてバサバサです。お体には幸い切り傷などはありませんので、一度湯浴みをしていただきます」
ローラは早口にまくし立てられて、リーアの言っていることの半分も理解できていなかった。
けれど、自分が汚れているからきれいにしろと言われたのは、何となく分かった。
目を白黒させながら、何とか頷く。
「では早速、湯殿にご案内いたします」




