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真珠の姫君~海に捧げる子守歌~  作者: とも
第二章 そして、陸へ
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〜そして、陸へ~11.

『あの、手すり……』

思わず出した声があまりにひどい声で、思わず口に手をやる。でも、出た!

それに、前ほど喉が痛くない。


やっと喋ったローラに、ウィルはわずかに眉を上げたが、口を挟まず先を促した。

『……えっと落ちそうになって、思い出したことが……。前にもこんなことが、あったような気がします』


自分でも悲しくなるような掠れ声。だがそのおかげか、切れ切れに喋っても嘘くさくならない。


『色んな処で、歌を披露していました。……ただ、どうしてあそこにいたのかは、記憶になくて……』


ヴァリーはああ言っていたが、ローラは元来嘘が得意ではない。ヴァリー相手でなくとも、仲間たちにもすぐバレる。

ウィルが危ない目に合う場面を、見続けたのは本当。海の上に出ては歌を歌っていたのも本当。あの岩場に打ち上げられることになった記憶がないのも、本当……。 


今の自分の説明が、あまりに簡略過ぎるとは思うが、これ以上を嘘無しで語る技術は残念ながら、ない。


「……うーん」

『あのっ……』

何か言わなければと思うが、手で制される。

「いいよ、今はまだこれ以上話さないで。また声が涸れてきてるよ」


喋るほどに声にならなくなった彼女に、グラスを差し出す。

「君は、異国の歌姫ってことかな……。なら、余計大事にしないと」


見つめるだけの彼女に、ウィルはそっと手を添えて持たせて言った。

「喉に良さそうな果汁を何種か混ぜたものだよ。どうぞ」


コクリと頷くと、そっと口を付けて飲んだ。ゆっくりと飲み込むと、ねっとりした喉ごしなのにさっぱりしていて、美味しい。


「君の身元が分かるまで、ここにいるといい。歓迎するよ」


グラスに落としていた視線を上げると、じっとこちらを見ていた彼と目が合った。

その時、ニコリと笑ってくれる笑顔が、あの時と変わっていないことに気付く。

声にならない分、自分も笑顔を返そうとする。なのに、泣き笑いのような顔しかできない。


崖下でのことはこちらが意図したことだとしても、助けてもらっていなければ、私はもう生きていない。

その上、たった今も、助けられている。


これでは、全く立場が逆である。


ローラが自分の不甲斐なさに落ち込んでいると、ウィルがスッと立ち上がった。


「ローラ、悪いけどこれから用があるので、失礼するよ。それで」

その言葉に合わせたように、扉がスッと開いて、昨日見た侍女と同じお仕着せを着た女性が入ってきた。


「彼女はリーア。君の世話をしてもらう。年も近いし、何でも相談するといい」


ウィルの紹介に、リーアと呼ばれた少女は目を伏せたまま、頭を下げた。


「リーアと申します。宜しくお願い致します」

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