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真珠の姫君~海に捧げる子守歌~  作者: とも
第二章 そして、陸へ
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~そして、陸へ~8.

お久しぶりで、ございますm(_ _)m


ーーここは……?


少女は、どこか懐かしさを覚える、青い空間で目覚めた。

いや、本当に目覚めたのか……。


彼女の身体はとりとめもなく半透明で、ふわふわと浮遊していた。


ーー何、コレ。

不思議な感覚に驚くばかりの彼女に、声がかかる。


「何だ、忘れ物かね?……ローラ」


振り向くとそこにはヴァリーが座っていた。


「懐かしい気配だ。……おや、ちゃんと王子の宮に潜り込めたようだね」


相も変わらず、喋らなくとも此方のことはお見通しのようだ。

それなら、聞きたいことを率直に聞いた方がいいだろう。


『私、どうして声が出ないの?これも人間になるための見返りなの?』

実体でないためか、今度はちゃんと声が出た。

不安の混じるその声に、特に気にする様子もない口調で返す。


「単なる不可抗力だよ。ーーだが、好都合でもあった筈だ。容姿はなんとか変えられても、お前のその声はそうもゆかん。元の通りの美しい声ならば、第一声で正体が知れとるぞ。……薬焼けしとるくらいで丁度良い」


それを聞いて、彼女はやっと心から安堵した。やはり、一族の薬師の言うことは絶対なのだ。


『私、どうしてここにいるの?』


ヴァリーは少し目線を上げて、ふよふよ浮いている娘に目をくれる。

そして静かに言った。


「ーーさあな。余程聞きたいことでもあったんだろうさ」


ーーあ!そうか。

『私、どうして崖の下に転がってたの?おぜんだてってやつ?』


早口で尋ねると、またも水晶球をぞんざいに転がしながら応じられた。


「あの位の怪我でもあった方が、怪しまれんだろう?手負いの小娘が王子への刺客などとは考えにくいしな。ーーそうさな、記憶が曖昧と思われとると言うことは……。船か崖から競争相手に突き落とされた異国の歌姫、くらい言ってもばれはせんだろうよ」


……え、ほんとに?でもばれないかなぁ。

頭の中で、ヴァリーが語った身の上話を整理する。


「できるだろう。お前は幼い頃から、私の語りを他の誰より多く聞いていた筈だ」


それはその通りだ。しかも、ヴァリーの語りは実に様々な言語が使われているため、陸の上の国の、沢山の言葉がいつの間にか分かるようになっていた。


ーー何が役に立つかなんて、分からないものなのねーー


彼女は、薄暗い洞穴でできた、海の中の住処を見渡した。自分も似たような住処で、仲間とともに暮らしていたのだ。

『ね、ヴァリー。人の住処は見たこともないものばっかりで、とても驚いたわ。スゴいのよ、部屋の中が明るいし、濡れてないの!それにね、私、折角足があるのに、何と、歩き方が分からないのよ!』


ローラは、おそらくヴァリーか当に知っているであろうことを、一生懸命語った。

ここにどれぐらい留まっていられるのかも分からず、ーーただ、自分はもう二度と、生身の身体でここを訪れることは、ない。


自分の行方を知る語り部に、全てを自分の言葉で伝えておきたい、その一心で。


「口のきけないうちに、記憶が曖昧な素振りで情報を集めることだ。陸上でお前のすることは、殆どそれしかないからの」


ーーそれから、歩き方が分からないって?二本あるんだから、交互に前に出せばいいだけだろう?




その言葉を最後に、ローラは強烈な力に引っ張られた。




読んでくださりありがとうございました。

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