~そして、陸へ~7.
世の中大変なことになってますね…。
家のトイレットペーパーが、あと二巻きになってしまいました…(´д`|||)
医師に、あまり声を出さないようにと言われたので、ローラは身振りでウィルに話題を変える話を振った。
ーーここは、どこ、ですか?ーー
幸いウィルは察しがいいらしく、すぐに話に乗ってきた。
「ああ、ここ?……えっと、ここはね……」
突然、ウィルの歯切れが悪くなる。言おうか言うまいか迷っているような……。
「まあ、いいか。黙っていてもいつかばれるし。……ここは、王宮だよ」
ーー王宮?
首を傾げる彼女に、ウィルも同じように首を傾けた。
「……ピンと来ないって顔だね」
珍しいものを見た、という表情で、ウィルが思い出したように薬湯を指差した。
「あ、アレ、あったかいうちに飲んだ方がいいよ。冷めるとめちゃくちゃ不味くなるから」
ええっ!……それを早く言ってほしいっ。
もたもたと寝台の上を移動して、ウィルとは反対側の脇に置かれた薬湯に手を伸ばした。
途端、無理な動きに引っ張られて、上掛けがずり落ちる。
ーー!
慌てて上掛けを戻そうとし、バランスを崩して寝台から落ちそうになった。
「……っと、危ない」
後ろから、胴をさらうように支えられた。
あれ?こんなこと、前にもあったような……。
彼女の思考を尻目に、ウィルは掛けてあったらしいガウンを細い肩に着せかけた。
そしてそのまま、寝台の周りを回ると、薬湯を手に取り彼女の両手に持たせた。
薬湯はいかにも葉っぱ~という感じで、物凄い臭いもしていた。量は多くないのだが、ドロリとしたその見た目は、とても口をつける勇気が出ないようなものだった。
ーーこれ、飲まなきゃダメ、かしら……?
たっぷり躊躇しているのを見て、ウィルが小さく何かを言っている。
「……確かに見た目が、なあ」
見つめれば見つめる程に、飲む勇気が失せていく。
器を持ったまま、びどーだにしない彼女に「ちょっと貸して」と言いおくと、その手から取り上げた。
ローラが驚いて見上げるよりはやく、ウィルが薬湯をぐいっと煽った。
目を見開いてその様子を見ていた彼女の顎をくいっと上げると、抗う間もなく唇を塞ぐ。すると、何かが口に流れ込み、喉を通りすぎて行った。
「……はい、おしまい。悪夢は早く終わらせるに限る」
彼女は頭が真っ白になっていた。
一体、今、何が起こったのか、ちゃんと理解できない。
いや、段々解ってきた。
ーー私は、薬湯を飲むのを悩んでいた。そしたらそれを、ウィルが取り上げて自分で飲んで……。そう思ったら実は口に含んでいただけで、実際に飲んだのは、ーーわたし??
そう理解した瞬間、何かが爆発した。
『バ』
カーーーーッ!!と続く筈だったのだが、口を手で塞がれて、声は出なかった。
その代わり、また大量に咳が出た。
「駄目だよ、ローラ。あまり声を出さないように言われたろう?」
だ、誰のせいよ、誰のっ!
「見かけほどは不味くないけど、慣れるまでは飲みにくいからね。……それにしてもあのオヤジ、女の子の薬湯には糖蜜を入れるなんて、ひいきだよな」
まだむせている背中に、話しかけながら優しくさすってくれている。
ポンポンと、彼女の息が落ち着くまで、大きな手が離れることはなかった。
「今はよく休んで。話が出来るようになったら、聞かせてもらうから。ーー少しお眠り」
ローラは、背中をさすられながらフッと眠気が襲ってくるのを感じる。
ーーあ、ダメ。もう寝てなんていらんないのに……!
どうやら薬湯には、眠り薬が混ざっていたようで、意識が急に重くなる。
ローラはウィルの袖口をぎゅっと掴んだまま、ストンと眠りに落ちていった。
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