~そして、陸へ~5.
かなり間を開けてしまいました…。
やがて部屋に戻って来たウィルは、何人か人を連れてきた。
その中の医師と思しき人物は、彼女の喉の状態と全身を手早く診察した。
「この喉の炎症は、……酷い薬やけのようですね。何か、かなり強い薬を飲んだか飲まされたか……」
この台詞に、彼女はかなり驚いたが、医師は違う解釈をしたようだった。
「覚えていませんか?……貴女はこの方に名を名乗ったようですが、他には何か覚えていることはありますか?」
そう言われても、彼女に答えるべき過去など、もう何もない。
途方に暮れたように、首を横に振った。
その様子に軽く頷くと、医師は質問の相手を変えた。
「この娘さんは先ほど立ち上がって、倒れたそうですね?」
ウィルと医師とで、何やらやり取りが始まった。
「……崖の下で倒れていて……」
「……全身、打ち身等もあるようですし……」
当の本人が説明できないため、状態と状況で判断してくれているようだ。
医師が、侍従に薬湯の準備を指示しながら話してくれた。
「大丈夫ですよ、ローラさん。薬と、頭に受けた傷で、少し記憶が無くなったり混乱したりしているようですね。落ち着回復します。喉もね、すぐには無理ですが、少しずつ声も出せるようになりますよ」
それまで寝台の上で、不安げな面持ちで診断を待っていた少女は、明らかにほっとしていた。
初老の人の良さそうな医師は、大丈夫、と言うように、少女の頭をポンポンッと撫でた。「また様子を、診に来ますからね」と言いおいて退室した。
やがて、薬湯の入った椀を寝台の横にあったテーブルに置いて、侍従が立ち去ると、室内はしんと静まりかえった。
ウィルと、ローラ(仮)を残して。
彼女は、少し離れた場所に置かれた椀を、取ろうか取るまいか悩んだ。
ここにきて先ほど、ウィルが上掛けを引き上げてくれた理由が分かったからだ。
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