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真珠の姫君~海に捧げる子守歌~  作者: とも
第二章 そして、陸へ
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~そして、陸へ~3.

リアルが急に忙しくなり、気付いたら大分あいてしまって……。

ーー人間になったら、どうやってその事が分かるの?ーー


マリエッタは、ヴァリーの住み処でそう聞いていた。


1ヶ月経ったら、朝日とともに、泡になるのだという。

けれど、期間内に人に成れたとして、姿はもう人間なのにどうやって気付くのか。素朴な疑問であった。


対してヴァリーは、こう応えた。


「仮に人の姿となったとしても、人と人魚では決定的に違うところがある」


……だから、それを教えてほしいのに……!

マリエッタのそんな言葉に、ヴァリーは薄く笑っただけであった。




**********


今度はすんなり目が開いた。

目が覚めてまず、その事にびっくりした。


身体は相変わらずあちこち痛かったが、動けないほどではなくなっていた。


ここ、どこーー?


知らない間に、何処かに運び込まれたようだった。


見たこともないものだらけの部屋に、一人寝かされていた彼女は、そうっと起き上がる。


そして、あるコトを思い出して、掛けられていた上掛けを思い切りめくった。


するとそこには、白くてすらりと伸びた、二本の足があったのだ。


ーー足。これが、足?


ゆっくりと、指先に力を入れる。すると自分の思うように、足の先が曲がった。


二本の足を揃えて、寝台から下ろし、床に着けてみた。

けれど、ここから先、どうしたらいいのか、さっぱりわからない。


ー思い出して、ウィルとか、他の人達はどうやって歩いていたっけ……?


そして不意に、目線を上げると、少し離れた場所からこちらを見返す娘と目が合った。


びくりと後退ると、同じくその娘も後退る。それでようやく気付いた。


ー鏡ーー?


あんな大きな鏡を見たのは生まれて初めてだが、だから分からなかったのではない。


鏡に映る、自分の姿。肌もあらわな寝間着の下に、たくさん巻かれた包帯。


そして見返す瞳の色は、漆黒。流れるように、背にかかる髪もまた、漆黒だったのだ。


ーー何、コレ、私?


思わず立ち上がってみたものの、そこからどうしたらいいのか、やっぱり分からない。


足に力を入れてみるが、それで歩ける訳もない。あろうことか、突然、膝の力ががっくりと抜け、そのまま、前のめりに倒れそうになった。


……!


来るべき衝撃に備えて、体を固くしたが、どうも倒れてはいないようだ。

きつく閉じた目を、恐る恐る開けると、肘と腰をたくましい二本の腕で支えられていた。


「おっと、……失礼、お嬢さん。様子を見にきたんだけど……」


後ろから抱きすくめるように立っていたのは、以前会った時より、更に大人になったウィルだった。

彼はそっと彼女を抱き上げて、今出てきたばかりの寝台へと運んだ。


「気が付いたようだね。気分はどう?」

黙ったままの彼女を見て、いきなり登場した自分に驚いていると思ったのか、ウィルは言葉を続ける。

「声も掛けずに邪魔してすまない。静かだったからまだ眠っているかなと思って、覗いてみたんだけど……。鏡を見て百面相してたから、声をかけそこなってしまって」


……!一体、いつから見てたのっ?


声を出そうとして咳き込む。

かなり喉が痛いことに、今更気付いた。


『……あ、……』

掠れて、うまく声を出すことができない。


その時、彼女はあの言葉を思い出した。


ーー目覚めた時、お前は何も持ってはいないーー

全身の血の気が、いっぺんに引いた。


ーーもしかして、……声、も……?


読んでくださってる方、ありがとうございます!

遅くなってすみません(。>д<)

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