~そして、陸へ~2.
ペロペロぺロ。
頬を、何か熱くてざらざらしたもので撫でられる。
ハッハッハッ。
耳元の辺りで、荒い息づかいを感じる。
……ん……、何?
意識の浮上とともに、体中がバラバラになりそうな痛みに襲われる。
瞼が重くて、目を開けることもままならない。
水に浸かった下半身が、急激に感じたことのない感覚を覚える。
何コレ、……痺れてる?
訳もわからず、思うように開かない瞼を必死で持ち上げた。
うっすらと目を開けると、眼前には、見たこともない毛むくじゃらの生物の顔が在った。
声にならない悲鳴を上げて、逃げようとするが、まったく彼女の姿は動かない。
その為、彼女は頭や顔を舐められ続け、よだれまみれになった。
初めは恐怖でいっぱいだった彼女も、純粋な興味と関心にまみれた生き物の行動に、敵意がないことにホッとしていた。
それにしても、そこかしこが痛くて、起き上がることもできない。
そのまま、その生き物のされるがままになっていると、不意に、別の声が聞こえてきた。
「アッズーロ!おーい、アッズーロー……。どこに行ったんだ?」
少しずつ近づいて来るその声に、彼女は聞き覚えがあった。
バウッバウッ!
大きな声でその生き物が吠える。『アッズーロ』と呼ばれて、とても嬉しそうだ。
「おっ、……ここにいたのか。……どうした、何を見つけたんだ?」
大きな体の影に隠れて見えなかったのか、少女には気付かず、声の持ち主が近づいてきた。
そこでようやく、岩に突っ伏す体に気付いたようだ。
「おいおい、アッズーロ。また死体を見つけたのか?勘弁してくれよ」
……勘弁してほしいのはこっちだ。
会いたくてたまらなかった人に、会った途端に死体に間違えられるとは……。
恨みがましく、何とかうっすら目を開けると、こちらを見ていた人が慌てた様子で声をかけてくる。
「おっと……。失礼、お嬢さん。気がついたかい?」
ゆっくりと抱き起こされて、ようやくウィルと目が合った。久しぶりに見た、緑がかった青い瞳を確認すると、彼女の意識は、再び闇にのまれていった……。
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