~そして、陸へ~1.
一日空いてしまいました……。
時を待っていた……。
残された時間は少ない。
それを有効に使う為に、ギリギリまで待った。
何せ、機会は一度きり。
自分の視たあの場面に確実に出くわす必要がある。前後に十日ほどは余裕をみたい。
その為に、三年、時を進めなければならない。けれど、自分はすでに人に恋をしている。行動に移さなくても、寿命は確実に縮まると、ただ一人の協力者に諭された。
マリエッタは薬を飲んだ。
眠りにつくため。
自分の時を止め、その間に、『あの時』に辿り着くために。
ウィルのもとに、歌いに行くことも、最早できない。
三年の間に、私はきっと、忘れられるのだろう。
その間に、彼には大事な人ができるかも知れない。
あの後、 ヴァリーは一日かけて薬を調合した。眠り続ける薬と、人になる薬だ。
ーー次に目覚める時、お前は人の浜にいるだろう。人の姿でな。
ただし、お前に持つものは何もない。人魚の姿も、お前の名も、過去も。
何とかして想い人の側に潜り込むのだ。そして、お前の望みを叶える機をうかがえ。
……何、お膳立てはしておいてやろうーー
記憶にあるのは、そこまで。
マリエッタは、長い長い、夢をみた。
夢の中で、彼女はなんとか、彼の姿を見つける。
道で、王宮で、砂浜で、そして、船の上で……。
一生懸命走る。
彼の側に、行かなくちゃ……。
けれど、いつも彼女の足は、重かった。
まるで体中が、鉛でできているかのようで。
また、人の身で、自由の利かぬ水の中にいるようで。ーーそんな感覚。
ーー危ない!ウィル!!ーー
ウィルに、自分の声は聞こえていない。
まるでいつかの、未来の夢の中のように。
彼女の声は、届かない……。
何度も、何度も、繰り返される悪い夢の中で、それでも彼女は、諦めきれずに藻掻いた。
次は、間に合う。
次は、助けられる……。
彼女は、未だ、自分が夢の中にあると知っていた。
まるで永遠かと思うようなその世界では、一度も彼女の願いが叶うことはなく。
彼女は。
現実の世界へと。
引き戻されて行った……。
何とか第二章へ。
読んでくださってありがとうございます!




