~緩やかな時~17.
一日空けてしまいました。
……恋?
……私がウィルに??
マリエッタは混乱していた。“恋”というものを知ってはいたものの、それが自分の身に起こっているなんて、考えてもみなかったのだ。
彼女は、物語の中の恋しか知らなかった。聞いていて胸がときめく、ロマンチックなものしか。
けれど、言われてみれば、会えない時間のどうしようもない不安感や悲しい気持ちを除くと、一緒に居るときの沸き立つような気持ちや、ウィルのことを思い出すだけで幸せな気分になることなどを考えると、自分の知る“恋”に似ているような気がした。
ぐるぐる思考の渦の中にいた彼女の考えがまとまり始めた頃を見計らって、ヴァリーが口を開く。
「おや。随分と美形な男の子だねえ。ちとまだ幼いが」
水晶玉は奇妙な光を帯びて、ウィルの姿を映し出していた。
「……!」
思わず身を乗り出すと、その様子にヴァリーは口の端に笑みを浮かべた。しかしすぐに視線を戻す。
水晶玉を見つめる表情は、少しずつ険しくなっていく。
「ふうん。どうやら普通の少年ではないようだよ。……この子、長くは生きられないね」
あまりと言えばあまりの言葉に、マリエッタは叫んだ。
「どうしてっ!!」
体が弱い様子はなかった。以前海に落ちて三日間無人島で過ごしてなお、意識も態度もはっきりしていた。今回だって、怪我をしてしまったけど、それ以外どこも異常は無さそうだった……!
まるで、その考えを読んだかのように、ヴァリーが言った。
「そもそも、何でその子は船から海に落ちたんだい?」
彼女が何でその事を知っているのかなんて、いつものことだから気にならない。しかしマリエッタは口ごもる。
全然考えてもみなかった。そう言えば、最初に理由を聞いたとき、何だか言いにくそうだった。
マリエッタは、首を振った。
「言いたく無さそうだったから……」
ーー私はウィルのことを、何にも知らない。
当たり前の現実を目の前に突きつけられて、彼女はショックだった。
人と人魚だから、関わってはいけない。……そんなコトを言いながらずるずると通い続け、自分だけが満足していた。
ウィルのことを、それ以上知ろうとしていなかった。
「知りたいかい」
いつも被り布を深くして、めったに見えることのない灰色の瞳がマリエッタを見据えた。
「それがどんな運命だろうと、あんたは知りたいのかい」
「知りたい」
知らず人魚の娘は涙を流した。
「ウィルのことを、ー知りたいの」
瞬間、水晶が目映い光を放ち目が眩む。
閉じた眼をゆっくり開き、再び目が慣れると、マリエッタは不思議な映像を見ていた。
明日から仕事ですー。皆様お盆休みいかがでしたか?
なかなかウィルのところに行けなさそう。マリエッタ、頑張れ~。
読んでくださってありがとうございます(*^^*)




