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真珠の姫君~海に捧げる子守歌~  作者: とも
第一章 緩やかな時
17/36

~緩やかな時~16.

いつも読んでくださってありがとうございます。

さくさく進まずアワアワしてます。

仕事が始まる前に、もう少し進めておきたい、気持ちはいっぱいです(^^;

*********

それからマリエッタは、新月の夜半、同じ場所で歌うようになった。


きっと、彼は来ていない。

……それでも、少しでも彼の近くで歌いたい。

岩場までは近づかない。

寄る辺なく、知っている歌を、体力が続く限り歌った。


二度目の新月。ウィルから返事があった。

彼女が歌い出すと、微かに笛の音が聴こえてきたのだ。

ーーウィルが来てる!

それだけで、彼女の胸はいっぱいになった。

その日から、最後に歌うのは必ず子守り歌になった。

それで合図にもなる。「これが最後」と。

歌が終わると、笛の音が聴こえる。

それが、二人のやり取りの全てだった。



明るく活発だったマリエッタは、よく沈み込むようになっていた。

考え事をして大きくため息をついたり、かと思うと急に明るく喋り出したり。


あんなに海上に出て歌うのが好きだったのに、新月の晩以外は、全然出ていかなくなっていた。

そんなマリエッタの変化に、仲間たちも首をひねっていた。

勿論、彼等に心当たりなどある筈もなく。


「マリエッタ……、最近元気がないのね。いったいどうしたの。具合でも悪いの?」

とうとう仲の良い、エミリアという娘が切り出した。

日々憔悴していく姿は、明らかに何らかの異変を周囲に伝えていた。

「何でもない」と言い張る彼女を、仲間たちは一族の呪い師ヴァリーの処に連れて行った。

彼女は、呪い師であり、薬師であり、語り部でもあった。


『千里のヴァリー』と呼ばれるその人物は、人魚の娘たちが住み処に入って行くと、待ち構えていたように言った。


「おいでマリエッタ」


いつもそう。ヴァリーにはみんなお見通し……。

素直に傍らに寄る件の娘の様子に、皆安堵したのか潮が引くように去って行った。


ヴァリーがこんな風に名指ししたのは、マリエッタだけ残れと言ったのと同じであった。


双方黙したまま、暫しの時が過ぎる。

目を伏せたままの少女は、被り布の間から、じっと見つめる眼を感じていた。

自分の心を見透かされているようで、少し嫌だったが、それ以上に自分でも分からない、押し潰されそうな不安の正体を、教えてもらえるならそれもいい。

そう思う気持ちもまた事実だ。


たっぷり半刻以上が過ぎて、沈黙は唐突に破られた。

「あんた、人間に恋してるね」


……。

何を言われてもいいと思っていた彼女は、言葉を失った。


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