~緩やかな時~10.
同じやり取りは、以前にもあった。
実際その通りだと思う。彼の危機に、たまたま私がその場に居合わせた。それこそが、一番の救い。
どちらからともなく、笑っていた。
なんとなく思った。
ーーうん。きっとウィルは大丈夫。まだ笑えているもの。
「さあ、今は休んで。嵐がおさまったら送って行くからね」
とは言ったものの、彼の表情がちょっと歪む。
寝ようとすると、傷に障るのだろう。
マリエッタは、少しウィルの方に身体を寄せると視界が塞がっている彼を、ゆっくり引っ張った。
「??」
不思議そうなの顔の彼の頭を、痛くないように自分の尾びれに乗せる。
膝枕のような形にすると、傷が痛くないよう手をそっと乗せた。
「……気持ちいい」
人魚の体温は、人よりずっと低い。傷口は熱を持つので、固い岩に直接寝るより快適な筈だ。
「大丈夫。もう、大丈夫だよ……」
顔の半分が隠れているので、今どんな表情かはうかがい知れない。けれど、肩の力が抜けたのが伝わってきた。
マリエッタは、歌い出す。このひととき、彼にとって少しでも癒しになるようにと。
『ららら 夢の中で見たものは
良いも悪いも 銀の糸
ららら 紡いでお空にお上げましょ
月も 星も 喜んで
その糸 織ってくれるでしょう……』
願わくは、この歌があなたの眠りを守ってくれるように。
いつしか、規則正しい寝息が聞こえ、人魚の娘は微笑んだ。
その胸に暖かく息づく思いには、未だ気づかず。
ただ、今は、彼の眠りを護るように。
いつまでも優しい子守り歌を歌うのだった。
ようやくネタ紛失部分が終わりました。
後から書き足した部分だったので、それなりに大事なのに見つからず。筋は変わってない筈なんですが、細かい伏線とかがなくなってたりして……(^^;
読んでくださってありがとうございます。




