~緩やかな時~9.
ぽつりと、そう呟いた。
あれから地上の時間では、五年の月日が流れている。私が一つ年をとる間に、彼は同じ歳になっていた。
ーー私達は流れの違う時の中に生きている。
たった二度、偶然出会っただけなのに、まざまざと違いを感じて、彼女は憂鬱な気分になってしまった。
「……そうだね。確か、あれは五年前だったか……。俺は十六になったよ」
けれど、ウィルは特に悪気はないであろうことを、次の瞬間口にした。
「あの頃マリエッタは、今の俺位だった?じゃあ素敵な大人の女性になっただろうね。……さっきは目が霞んでたのと一瞬だったから、よく分からなかったんだ」
残念。
そんな感じに、他意無く呟いたのだ。
彼女は、訳も分からず冷や汗をかいた。時の流れが違うことは、当たり前のことではないのだ。
その事に妙な焦りを覚えて、つい言ってしまった。
「そうなの!ついこの間、二十歳になったわ!」
彼は、殆んど変わっていない自分に気付かなかった。そして何故か、ウィルに異質な者と思われることがイヤだと思ってしまった。
「その布、取らないでね。傷口押さえてあるから、後、また送って行く時に海水から少しでも保護できるように」
ウィルが私の姿を目にしなければ、おかしいと思わないよね?
そんな思惑で口にした言葉だったが、彼はとても好意的に受け止めてくれた。
「また送ってくれるんだ?……ありがとう、それに何度も助けてもらったね。」
そこで一度言葉を切る。
「あなたがいなかったら、俺は今頃生きてはいなかった」
マリエッタは、そっと首を降る。でも、首を振っても見えないと気付き、そっと付け足した。
「あなたの運が良かったのよ」
と。




