第4話 商人ギルドと職人組合の友情
そんなある日、グリーンハーブ村を揺るがす大問題が持ち上がった。
商人ギルドと職人組合が、長年にわたって対立していたのだ。
商人たちは「職人たちの製品は値段が高すぎる」と主張し、職人たちは「商人たちは適正な価格で買い叩こうとする」と反論。両者の関係は氷点下だった。
村長が頭を抱える中、エレネが名乗りを上げた。
「私に任せてください」
最初のターゲットは、商人ギルドの会長、頑固者のゴードンだった。
エレネは彼の店を訪れ、職人たちが作った小さな木彫りの熊を買おうとした。
「その熊、いくらですか?」
エレネが尋ねると、ゴードンは鼻で笑った。
「あれは職人組合のジョナサンが作ったものだ。値段が高すぎるから、もう仕入れていないよ」
「でも、すごく精巧ですよね」
エレネは熊を手に取り、目を輝かせた。
「ジョナサンさん、どんな思いでこれを作ったんでしょうね」
次の日、エレネは職人組合のジョナサンを訪ねた。彼は作業場で新しい作品に没頭していた。
「ジョナサンさん、この熊、本当に素敵です」
エレネが言うと、ジョナサンは驚いた顔をした。
「あんた、あの熊を買ったのか?ゴードンがあんな値段で売るなんて信じられない」
「実は、ゴードンさんはあなたの作品をとても評価しているんですよ」
エレネはいたずらっぽく笑った。
「『ジョナサンの技術は本物だ。ただ、もっと多くの人に手に取ってもらえる価格にしてほしい』って」
ジョナサンは眉をひそめた。
「本当にそう言ったのか?」
「本当ですよ。彼、実はあなたの最初の作品を今でも大事に持っているんですって」
これは完全な作り話だったが、エレネの力が発動した。
ジョナサンの表情が少し和らいだ。
エレネの計画は続いた。
彼女はゴードンに「ジョナサンが新しい販売方法を考えているらしい」と伝え、ジョナサンには「ゴードンが共同マーケットの提案を考えている」とほのめかした。
実際、どちらもそんなことは考えていなかったが、エレネの言葉は魔法のように作用した。
転機は村祭りの日だった。エレネは両者を偶然(そう見せかけて計画通り)同じ屋台の前に立たせた。そこには、ジョナサンが作った新作の木彫りが並んでいた。
「これは……すごいな」
ゴードンが思わず呟いた。
「前よりずっと手頃な価格だ」
ジョナサンがうつむいた。
「エレネが、多くの人に喜んでほしいって言うからな」
その瞬間、エレネの特別な力が最大限に発揮された。
2人の間に見えない橋が架かったのだ。
「実はな、ジョナサン」
ゴードンが咳払いをした。
「お前の作品、本当はもっと売れるはずだ。ただ、マーケティングの方法がな……」
「お前の販路なら、確かに多くの人に届けられるだろう」ジョナサンが認めた。
「ただ、適正な対価は保証してほしい」
エレネがそっと微笑んだ。
彼女の力が、2人の心を結びつけていた。
数週間後、商人ギルドと職人組合は歴史的な契約を結んだ。
職人たちは特別価格で商品を提供し、商人たちはその分、販売量を増やすことで収益を確保するという、画期的な協力関係だった。
グリーンハーブ村では、それ以来、商人と職人が一緒に作業する姿が見られるようになった。




