最終話 エレネと黒魔術師の友情
エレネの最大の試練は、王国で最も凶悪とされる黒魔術師ザンテスとの出会いだった。
ザンテスは千年もの間、孤独に塔に閉じこもり、世界を憎んでいました。
彼の塔には、近づく者をカエルに変える呪いがかけられていました。
多くの騎士や魔法使いが挑みましたが、誰もがゲロゲロ鳴く緑色の両生類になってしまったのです。
ある晴れた日、エレネは花で編んだ小さな冠を頭に乗せ、塔の前に現れました。
彼女は恐れることなく、重い鉄の扉をノックしました。
「こんにちは!お茶を持ってきましたよ!」
扉がギィーと開き、中から影のような人物が現れました。
ザンテスは長い黒いローブをまとい、目だけが不気味に光っていました。
「愚かな小娘め」
ザンテスが呟くと、エレネはたちまち小さな緑色のカエルに変えられてしまいました。
ところが驚いたことに、カエルになったエレネはぴょんぴょん跳ねながらザンテスに近づき、こう言いました。
「ゲロゲロ(あなた、ずっと一人で寂しかったんでしょう)」
ザンテスは目を見開きました。
千年間、誰も彼の孤独を理解しようとした者はおらず、ましてやカエルに変えられた後にそんなことを言われたことはありませんでした。
「ゲロゲロ(塔の中、すごく散らかってますね。お掃除手伝いましょうか?)」
ザンテスは魔法を解く呪文を唱え、エレネは元の姿に戻りました。
彼女はにっこり笑って言いました。
「私、あなたの友達になりたいの」
ザンテスは困惑しました。
「友達?私は千年間、友達などいらないと思っていた」
「でも」とエレネは塔の中を覗き込みながら言いました。
「この大きな塔で一人でいると、話し相手もいなくて退屈でしょう?私はおしゃべりが得意ですよ。それに、あなたが作ったこの魔法の照明、すごく綺麗!村のみんなも喜ぶと思います」
3ヶ月後、グリーンハーブ村には新しい住民が加わっていた。
ザンテスは黒魔術師としての服を脱ぎ、普通の紺色のローブを着て、村の図書館司書として働き始めていた。
彼の隣では、モグランが静かに本を読んでいた(エレネが文字を教えていた)。
図書館の入り口では、元盗賊団の面々が、ザンテスから魔法の照明を習い、村の夜道を明るくする準備をしていた。
ある夕暮れ、エレネは村の丘の上で、自分が仲良くしたすべての友達を見下ろしながら、ほほえんだ。
そこには、かつて敵同士だった者たちが肩を並べ、笑い合う姿があった。
村の少年がエレネに尋ねた。
「エレネお姉さん、どうしてみんなと仲良くなれるの?どうしてみんなを仲良くさせられるの?」
エレネは少年の頭を優しく撫でながら、答えた。
「秘密なんてないよ。ただ、誰にだって良いところはあるって信じてるだけ。そして、その良いところを見つけたら、他の人にも教えてあげるの。そうすれば、自然とみんな仲良くなれるんだよ」
エレネの不思議な力は、実は魔法でも超能力でもなかった。
ただの、深い思いやりと、誰もが持っている善意を見つけ出す鋭い観察眼。
そして、それを伝える勇気なのであった。
グリーンハーブ村は今、王国で最も平和で、そして最もユニークな村として知られていた。
どこへ行っても、魔物と人間が一緒に働き、かつての悪人が村の守り手となり、孤独な者が温かい居場所を見つけていた。
そしてエレネは今日も、新しい友達を作りに、森の奥へと歩いていくのであった。
彼女の後ろには、これまでに出会った多種多様な友達の列が、楽しそうに続いていた。
誰もがエレネの世界では、ただの「友達」だった——それ以上でも、それ以下でもなく。




