強靭な意思⑥
「どうしたらいいんだろう……」
俺の表情が強張っていることに気づいたんだろう。
ミカエル兄様は感無量といった眼差しで、俺を手招きした。
「ザナフェル、さあ早く、二人で世界を蹂躙しよう。この意味、分かるよね?」
ミカエル兄様は今か今かと待ち構えている。
その変わり身の早さは冷静さの証明であり、決して侮れない。
本当なら、魔法の不意打ちで、この場を離脱したいんだけど……。
ミカエル兄様によって、魔法は無効化される。
転移魔法を使っても、即座に察知されて、包囲されるのが関の山だ。
せめて、ミカエル兄様の意識が逸れている時でないと。
ぐるぐると考え込んでいたら。
「ああ~。お兄ちゃんは今世も、ザナフェルのことをめちゃくちゃ愛しています。だから、一刻も早く、ザナフェルと一緒に、世界を蹂躙したいんだよね~」
そう告げて、ミカエル兄様が進み出ようとした。
俺は素早く距離を取ると、颯爽と手をかざす。
「炎よ、業火の化身となりて焼き尽くせ――フレイム・スフィ」
「はい、魔法無効化!」
ミカエル兄様は詠唱破棄で、俺の炎の魔法を強制的に不発にさせる。
「言っておくけれど、私の隙を突いてこの場から逃げ出そうとしても無駄だからね」
ミカエル兄様は、俺の考えを見透かしたように微笑んだ。
無詠唱で、俺の魔法を妨害した。
俺たちは相変わらず、ミカエル兄様の圧倒的な力の前に翻弄されている。
やっぱり、魔法で隙を突いて、この場から離脱するのはかなり難しそうだ。
「世界を蹂躙……。それだけの力があるなら、ミカエル兄様の力だけでも充分なはずだ……」
「ああ~、ザナフェル。ふてくされている姿も、かわいい~!」
「うわあっ!! 何で、そういう解釈になるんだよ!!」
ミカエル兄様に思いっきり、抱きしめられた俺はひたすら絶叫するしかなかった。
「お兄ちゃん一人で、世界を蹂躙してもつまらないよ。ザナフェルがそばにいなくちゃね!」
俺の言葉に、ミカエル兄様は思いっきり、ドヤ顔をしてみせる。
「話し合いはいつまでも平行線。こんな時は甘いものをいっぱい食べたら、ザナフェルの考えも変わるかもしれないね!」
「その、根拠は一体……」
俺の訴えも、ミカエル兄様は届かない。
「じゃあ、ザナフェルたちを案内して」
「かしこまりました」
突如、現れたメイドたちに連れられて、あれよあれよという間に、俺と母さんは朝食の席に連れて行かれてしまった。
「服は、さすがにそのままじゃダメだね」
これまでの前世の出来事ですっかり鍛えられてしまったミカエル兄様の精神は、俺が必死に拒んだくらいでは動じなくなってしまったらしい。




