強靭な意思③
まばゆい波濤のその中から、巨大な影が舞い上がった。
翼を力強く打ち鳴らして、森の奥へと飛翔するドラゴンは。
「フォレストドラゴン。アンデッドドラゴンと同じ再生能力を持つドラゴンを選んだのか。今日は随分、冴えているね、ザナフェル!」
その光景を、魔法で垣間見たミカエル兄様は感嘆の吐息をこぼす。
「でもね、持久戦になれば、アンデッドドラゴンの方が圧倒的に有利だよ。即死級のデバフや状態異常のブレスが通れば、一瞬で勝負が決まるだろうね」
「確かに、そうかもしれない。だけど、戦場は森の奥。フォレストドラゴンは森の支配者だ。自然の力で、アンデッドドラゴンの攻撃を浄化し、相殺できる」
アンデッドドラゴン相手に、フォレストドラゴンは分が悪いかもしれない。
だが、戦場が森という強みがある。
森と同化して、アンデッドドラゴンに奇襲をかけることもできるだろう。
「なるほど。だから、フォレストドラゴンを選んだわけだね」
俺の言葉に、ミカエル兄様は感心したようにつぶやいた。
「ああ。その方法しか、思いつかなかったからな」
無限に再生するアンデッドドラゴンを相手にするためには、それ相応のドラゴンを召喚する必要があった。
それにローゼンさんは、瘴気を祓う加護を持っている。
その加護の力で、瘴気の核を破壊することができた。
俺たちの演奏の力で、ローゼンさんたちの能力は底上げしている。
そして、俺の力によって、顕現したフォレストドラゴン。
たとえ、アンデッドドラゴンが何度、蘇っても対抗できるはずだ。
「よし、これで……」
やりきったという達成感が、俺の視線を天井へと誘った。
「アンデッドドラゴンは何とかなるはずだ。あとは他の魔物をすべて倒せば、リンクス領は安全になるはずだ」
「ライル、すごいわね……」
柔らかい母さんの声が、すとんと胸に落ちる。
この安心感に、思わず泣きたくなった。
母さんは真実を知っても、俺のことを嫌いにならないでいてくれた。
俺のことを信じて、家族として愛し続けてくれている。
俺はそんな母さんのことが、今も昔も大好きで仕方なかった。
「母さん。フォレストドラゴンの支援があれば、ローゼンさんたちはきっと、大丈夫だ。俺たちはダナー商会の暗躍を止めよう」
「そうかな?」
俺の発言を踏まえて、ミカエル兄様はさらりと告げる。
「今は、私が目の前にいるから、ザナフェルたちはダナー商会の暗躍を止めることはできないだろうね」
「……っ」
その言葉の端々に、戦慄を覚えることすら忘れて。
俺は目の前のミカエル兄様に、ただただ、意識を奪われた。




