強靭な意思②
本当なら、転移魔法で、この場を離脱したいんだけど……。
さすがに、ミカエル兄様の目の前で行うのは危険すぎる。
即座に察知されて、包囲されるのが関の山だ。
せめて、ミカエル兄様の意識が逸れている時でないと。
「炎よ、業火の化身となりて焼き尽くせ――フレイム・スフィ」
「はい、魔法無効化!」
ミカエル兄様は詠唱破棄で、俺の炎の魔法を強制的に不発にさせる。
「あらかじめ、言っておくけれど、私の隙を突いてこの場から逃げ出そうとしても無駄だからね」
ミカエル兄様は、俺の考えを見透かしたように微笑んだ。
無詠唱で、俺の魔法を妨害した。
俺たちは相変わらず、ミカエル兄様の圧倒的な力の前に翻弄されている。
魔法で隙を突いて、この場から離脱するのはかなり難しそうだ。
「なら、別の方法を考えないと」
気を取り直した俺は引き続き、この不思議な会談に臨んだ。
二つの気がかりがある状況下、ミカエル兄様が目の前にいるという、最悪の事態。
この窮状で、自分にできることは何だろう。
「森にいるアンデッドドラゴン。再生能力を持つなら、こちらも同じく、再生能力を持つ魔物で対抗するしかないな」
アンデッドドラゴンは通常の攻撃が効かない。
魔法や弓も届きにくいだろう。
骨格型のアンデッドは、瘴気の核が弱点だ。
しかも、ミカエル兄様の力で何度でも再生する。
この場で、俺ができることはただ一つ。
対抗できるドラゴンを召喚して、アンデッドドラゴンを足止めするしかない。
「我が呼び声に応じ、リンクス領の地に影を落とせ!」
俺の声が厳かに響き渡る。
「ザナフェル。まさか、別のドラゴンを呼び出して、アンデッドドラゴンの足止めをさせるつもり……?」
呆気に取られた表情のミカエル兄様が、こちらを凝視した。
空間転移召喚。
ミカエル兄様と同じ方法なら、この場にいても対処できるはずだ。
だが、王宮からだと、リンクス領の森は遠い。
どうしても、巨大で複雑な魔法陣が必要になる。
「距離の概念を喰らい尽くし、我が敵の頭上へ顕現せよ! 森の守護神、フォレストドラゴン!」
溢れたのは天使の力。
その魔力はあっという間に、離れた森まで到達する。
俺の魔力が溢れたことで、リンクス領の上空に異空間の扉が開く。
「これって……?」
母さんが呆然としている間にも、俺から溢れる魔力は止まらない。
その勢いを落とさずに、さらに周囲に広がっていく。
リンクス領すべてを覆ったところで、やがて光がぱあっと弾けた。
その瞬間、リンクス領一帯が薄闇へと転じ、淡い緑の光流が大地に向かって叩きつけられる。




