どちらを優先するべきか⑧
すごく嬉しそうに見えるけれど……何だか、裏があるような笑顔だ。
俺がそのことに気づくこと前提で、話したような気がする。
うーん。
ミカエル兄様はやっぱり、俺の動向を楽しんでいる感じがした。
俺が抵抗したところで、ミカエル兄様の手のひらの上である。
そう思っていると、ミカエル兄様は意外なことを告げてきた。
「もちろん、ザナフェルが今まで出会ったことがある人たちの中に、ダナー商会の者がいるというのも、あながち間違いじゃないよ」
「なっ!」
その断言を聞いて、生きた心地がしなかった。
何しろ、その発言は、俺が今まで出会ったことがある人たちの中に、ダナー商会の者がいることになるからだ。
「それって一体……?」
「それは言えないよ」
とても含みのある即答だったから、俺は怪訝そうな顔をした。
視線を向けると、ミカエル兄様はすべてを把握したような顔をしている。
つまり、その問いの答えも持っているんだけど、言えないってことなのだろう。
これって、俺がどう出るのか、楽しんでいるんだろうな。
そう思いつつ、引く気のないミカエル兄様に、俺は観念して口を開く。
「じゃあ、王宮にいるダナー商会の者は、儀式の間にいた人たちとか?」
「はい、正解! 今日は冴えているね、ザナフェル!」
あっさり白状したミカエル兄様に、俺は動揺の色を隠せない。
だが、ようやく、ダナー商会の者を知ることができた。
初めて、リリアーナ王女に憑依した時、儀式の間にいた人たち。
建国祭でも見かけた、あの聖職者たちが、ダナー商会の者だったということになる。
「あの人たちが、ダナー商会の者……。それって、リリアーナ王女に憑依した俺が、ザナフェルだということを、彼らは知っているんだよな」
理性よりも先に、直感が結論を出した。
「……ということは、今世の俺のことも知られているのかもしれないな」
予想はしていたけれど、改めて口にすると、その事実が重くのしかかる。
「ライル、どうしたの?」
「実は――」
俺は小声で、母さんに事情を話した。
「その人たちが……」
俺の話を聞いて、母さんも困惑しているみたいだった。
だけど、俺の混乱を、母さんが半分背負ってくれたおかげで、少しだけ落ち着きを取り戻す。
「母さん。今はみんなを救う方法を考えよう」
「ええ。ライル、頑張りましょう」
「うん」
俺と母さんは顔を見合わせて笑う。
「……それにしても聖職者たちか。『天使覚醒』の日。思えば、あの日からすべてが始まったんだよな」
各地の街々の教会で一斉に、狂乱の天使を呼ぶ鐘が鳴り響いた日。
あまりにも美しいその音色に、吸いこまれてしまいそうだった。




