どちらを優先するべきか③
「はい、却下! ザナフェル、私たち天使は、普通に生きられるわけがないよ。天使の力は強大だ。すべてを意のままに操る力がある。これがどう意味なのかは分かるよね?」
「……えっ? それって……?」
俺が言いたかった言葉を、母さんが深刻な面持ちで紡いだ。
すべてを意のままに操る力。
それって、もしかして!?
再び、胸をよぎる嫌な予感。
こういう時の嫌な予感は当たるものだ。
確証はない。
それでもまた、森の奥で、何かが起きているような気がする。
「くっ! もう一度、森の奥を探査!」
俺はこれまでの現状から、そう結論づけた。
森の奥には、ローゼンさんたちがいる。
目の前には魔物の集団。
どうやら再び、抗戦しているようだ。
どんな魔物なのかは、目視しないと分からない。
俺は慎重に、魔法の視界共有を使って、戦闘の様子を確認する。
「なっ!? アンデッドドラゴンが復活している!」
俺の抱いた、嫌な予感は的中した。
倒したはずのアンデッドドラゴンが、ローゼンさんたちの前に立ち塞がっていたからだ。
「瘴気は、私たち天使が生み出したもの。つまり、瘴気を糧にしている魔物は、私たちの手足のように使うことができるというわけだよ」
愕然とした俺の顔を見て、ミカエル兄様は我が意を得たとばかりに微笑んだ。
「つまり、あのアンデッドドラゴンは、ミカエル兄様が生み出したものだったんだな」
「はい、正解! そこに行き着くなんて、さすがだね、ザナフェル!」
ミカエル兄様はにこやかな笑みを浮かべて、そう言った。
すごく嬉しそうに見えるけれど……何だか、裏があるような笑顔だ。
俺がそのことに気づくこと前提で、話したような気がする。
「アンデッドドラゴンを再び、消滅させても、先程の二の舞になる……」
胸に走った痛みを振り払うように、俺は頭を横に振った。
ローゼンさんは、瘴気を祓う加護を持っている。
その加護の力で、瘴気の核を破壊することができるはずだ。
だが、無限に再生するアンデッドドラゴンを相手にするのは分が悪すぎた。
「どうしたらいいんだろう……」
ふと、悩みの種を思い出す。
ネーア王国の建国祭の夜の部だけ、ダナー商会が関わっている。
つまり、昨夜、ダナー商会が暗躍している可能性が高い。
このままだと、アナスタシア様たちの身が危ない。
しかし、ローゼンさんたちを救うためには、支援を止めるわけにはいかない。
「……どちらも選べない。八方塞がりの状態だ」
二つの気がかりがある状況下、ミカエル兄様が目の前にいるという、最悪の事態。
この窮状で、自分にできることは何だろう。




