どちらを優先するべきか②
アンデッドドラゴンが消滅したことによって、荒涼とした森に穏やかな平穏が訪れる。
胸をなで下ろした俺は、部屋に備え付けられていたソファーに座った。
「はあっ……。何とかなったみたいだな……」
俺はぐったりと背もたれにもたれかかる。
昨夜、リリアーナ王女として過ごした時も大変だったけれど、今回はさらに気持ちが引き締まったような気がする。
俺たちの役目は、安全な場所で、みんなを支援すること。
アンデッドドラゴンは消滅した。
このまま無事に森の調査が終われば、あとはローゼンさんたちを歓待する報告会だけだ。
リンクス領は、これまで以上に安全な場所になる。
「母さん、アンデッドドラゴンの方は何とか、なったみたいだ。今度はルリア様たちを救出しよう!」
「ええ」
俺の言葉に、母さんは嬉しさ全開の顔で微笑んだ。
寄せられる信頼の大きさに、ちょっとだけ怯んでしまうけど、どうにか持ち直す。
今は、ルリア様とアナスタシア様を救うことが先決だ。
ネーア王国の建国祭の夜の部だけ、ダナー商会が関わっている。
つまり、今夜、ダナー商会が暗躍している可能性が高い。
「アナスタシア様たちの身が危ないのかもしれない!」
今までの状況から、俺はそう結論づける。
「……よし、ルリア様たちのもとに戻ろう!」
俺がそう意思を固めた瞬間。
「残念だけど、そう思うのは早合点だよ、ザナフェル」
不意に聞き覚えのある声がした。
「なっ!」
混乱をきたしていた俺たちのもとに、明るい金色の髪をした青年が近づいてきた。
抜けるような青空に似た瞳。
さらさらとした明るい金色の髪との対比が、本当に綺麗だと思った。
……だけど、俺たちにとっては、できればこの場で会いたくなかった存在だった。
「ああ~。ザナフェル、会いに来たよ!」
「うわあっ! なんで、ミカエル兄様がここにーー!!」
目の前に立っている青年が、ヴェルディ第一王子だと悟った俺は、ひたすら絶叫するしかなかった。
「昨夜、必ず、会いに行くって言ったよね。だから、会いに来たんだよ!」
さも当たり前のように告げたミカエル兄様の言葉に、俺は絶句する。
確かに、『必ず、会いに行く』と言ってはいたけれど。
いくら何でも早すぎる!
「ああ~。お兄ちゃんは、ザナフェルとすぐに出会えて幸せいっぱいです。だから、いい加減、二人で一緒に、世界を蹂躙したいんだよね~」
「いや、ミカエル兄様、ごめん! 俺は普通に生きたいから、もう――」
妙な居心地の悪さを感じつつ、俺は何とか断りを入れようとする。




