大切な人たちを守るために⑧
ここからローゼンさんたちをサポートして、アンデッドドラゴンの瘴気の核までたどり着かせる。
難題だが、やるしかない。
俺はぐっと覚悟を決める。
「転移魔法と空間魔法。どちらかじゃない。どちらも使わないと対処できない!」
ここからだと座標計算が難しい。
だけど、躊躇えば、甚大な被害が出るだろう。
ローゼンさんに瘴気を祓う加護を付与した時を思い出す。
何から何まで相談に乗ってくれたことも、そうだけど。
もっともっと、小さく無数にある感謝を込めて。
願いを込めた加護は、わずかでも熱が届いていますように。
気持ちを確かに音色に込めれば、ローゼンさんの唇は微かに緩んだ。
時間を遡るように、最近の出来事から過去の出来事へと思いを馳せる。
そして一番、最初の出会いを思い出したところで、胸の奥からふわりと魔力が溢れ出した。
「多重詠唱。空間の理をねじ曲げ、彼の者の架け橋を創り出せ――ブリッジゲート!」
俺の声が厳かに響き渡る。
転移魔法と空間魔法を同時に詠唱し、発動させることは極めて高度だ。
莫大な魔力が必要なため、魔力切れや制御不能のリスクが極めて高い。
神業的な難易度。
本来なら発動させること事態、困難な魔法だけど、天使として覚醒したからか、容易くできた。
「ローゼンさんを、アンデッドドラゴンの瘴気の核まで転移させる!」
溢れたのは天使の力。
その魔力はあっという間に、離れた森まで到達する。
波のように押し寄せた俺の魔力に触れたことで、アンデッドドラゴンがビクッと硬直した。
魔物は実質、俺たち天使の支配下に置かれている。
俺の……ザナフェルの魔力を感じ取ったことで萎縮したのだろう。
もっと、もっとだ……。
ローゼンさんに届くまで……。
そして、ローゼンさんがアンデッドドラゴンを倒してくれるように。
「なっ! ……ここは? もしかして移動したのか?」
森の奥……戦闘が行われている一帯が、天使の光で埋め尽くされる。
その瞬間、転移魔法が発動し、ローゼンさんがアンデッドドラゴンの核まで移動していた。
「よく分からねえけれど、これはチャンスだっていうことだよな!」
そう言ってのけると、ローゼンさんは笑みを綻ばせた。
「悪いが、逃がさねえよ!」
転移からの急襲に、アンデッドドラゴンは虚を突かれる。
体勢を崩したアンデッドドラゴンの不意を突く形で、ローゼンさんの痛烈な一撃が入った。
アンデッドドラゴンに突如、湧き上がったのは明確な畏怖。
本来なら、ローゼンさんたちとアンデッドドラゴンとの力量の差は歴然のはずだった。
だが、俺たちの演奏の力で、ローゼンさんたちの能力は底上げしている。




