大切な人たちを守るために⑦
「並のドラゴンじゃないぞ!」
「びくともしない!」
冒険者さんたちが戦っているのはドラゴンだ。
ただし、ただのドラゴンじゃない。
アンデッドドラゴンだ。
アンデッドドラゴンは通常の攻撃が効かない。
魔法や弓も届きにくいだろう。
骨格型のアンデッドは確か、瘴気の核が弱点のはずだ。
胸郭の中で燃えている赤い炎――あれが核だろう。
瘴気は、俺たち天使が生み出してしまったもの。
今世の幸せは、前世の罪の上に成り立っている。
だが、核を破壊すれば、アンデッドドラゴンを倒せるはずだ。
しかし、冒険者さんたちがそこにたどり着くのは困難を極めた。
「森の探索が順調で慢心していた。あれは、その辺のドラゴンとは別格の存在だ」
転移魔法を使って加勢した方がいいかな。
いや、それだと俺の力がバレる可能性がある。
ローゼンさんたちは、Aランクパーティー、『ドミニカ』……つまり、凄腕の冒険者たちだ。
迂闊に近づくと、俺の力のことを勘づかれてしまうかもしれない。
だったら、近づかずに援護する方法を考えるしかない。
「ローゼンさんたちにバレずに加勢する。かなり難易度が高いけれど、やるしかないな!」
アンデッドドラゴンが放った、闇の炎のブレスが森を焼き尽くす。
辛くも、冒険者さんたちは避けるものの、身動きが取れなくなる。
「ライル、どうしたの?」
「実は――」
俺は小声で、母さんに事情を話した。
「そんなドラゴンが……」
俺の話を聞いて、母さんも困惑しているみたいだった。
だけど、俺の混乱を、母さんが半分背負ってくれたおかげで、少しだけ落ち着きを取り戻す。
「母さん。ルリア様たちのもとに戻る前に、ローゼンさんたちに助力しよう」
「ええ、そうね」
俺と母さんは顔を見合わせてうなずいた。
森の奥に、ダナー商会の者たちはいない。
そのことを知り得ただけでも恩の字なのだ。
だが、森にいるアンデッドドラゴンが、彼らと関わりがないとは言えない。
虎視眈々とあらゆる隙を狙っているはずだ。
しかし、ダナー商会には、ミカエル兄様という後ろ楯がある可能性があった。
下手に動けば、ネーア王国や俺たち天使の従属国そのものを敵に回すことになる。
できるだけ、慎重に動く必要があった。
「あ、そういえば……!」
改めて状況を把握していた最中、俺は重大なことを思い出す。
ローゼンさんに瘴気を祓う加護、付与していたよな。
なら、その加護の力で、瘴気の核を破壊することができるはずだ。
俺は、はたとそう思い至る。
しかし、どうやって、ローゼンさんを瘴気の核までたどり着かせるか。
転移魔法か、空間魔法を使うしかないだろうな。
そう思い悩んでいる間も、ローゼンさんたちは阿吽の呼吸でドラゴンに立ち向かっていた。




