大切な人たちを守るために⑥
人生、何が起こるか分からない。
茜色の羽の天使、ミカエル。
空色の羽の天使、ザナフェル。
二人は強大な力を持った仲の良い兄弟だった。
しかし、二人は人間に対しては残虐非道で、この世界を遊戯と見立てていた。
それなのに、奇跡が起こった。
ずっと心に引っ掛かっていた、足りない『何か』。
俺は……『前世の自分』じゃなくて、『今の俺』を認めてくれる人を、求めていたのかもしれない。
そう考えると、脳裏に浮かんだ様々なことがすとんと胸の底へと落ちていく。
そんな人たちと出会えた。
これは紛れもない奇跡だろう。
噛みしめるように思う。
俺が事情を説明すると、母さんは力強く言ってのけた。
「ライル、やれるだけやってみましょう」
「……母さん」
幼い頃からずっと、俺は何度も母さんの力強さに救われてきた。
何があっても、母さんは俺の味方だった。
父さんは幼い頃に亡くなってしまったけど、母さんからの愛情を一身に受けて旅をする毎日が楽しくてたまらなかった。
自分の前世が、天使ザナフェル。
ミカエル兄様とともに、この世界を支配してきた超常の存在。
そして今までの前世では、ろくでもない人生を歩んできた俺だけど。
今世で、こんなにも大切だと思える家族に出会えたことは、きっと奇跡のようなものだろう。
「そうだな。このまま、留まっていても仕方ない。転移魔法があるし、一度、ルリア様たちの様子を見に行こう。ただ……」
今の俺たちの役目は、安全な場所で、森の調査に向かっているみんなを支援すること。
だけど、森の奥には手強い魔物が潜んでいる。
恐ろしくて巨大なドラゴンか。
瘴気を祓っているとはいえ、大丈夫だろうか?
再び、胸をよぎる嫌な予感。
ミカエル兄様が言ったとおり、森の調査どころじゃない。
最優先はアナスタシア様たちの安全だ。
二つ、同時進行は厳しい。
だが、こういう時の嫌な予感は当たるものだ。
確証はない。
それでも、何かが起きているような気がした。
「まずは探査の魔法で、周囲の状況を調べてみよう」
俺はこれまでの現状から、そう結論づけた。
森の奥に向かっているのが冒険者さんたちだろう。
ローゼンさんたちもいるみたいだ。
目の前には魔物の集団。
どうやら、抗戦しているようだ。
どんな魔物なのかは、目視しないと分からないな。
俺は早速、調査の様子を、魔法の視界共有を使って確認する。
「あれは……!」
俺の抱いた、嫌な予感は的中した。
「くっ……! なんだ、このドラゴンは?」
能力を底上げしたはずの冒険者さんたちが苦戦を強いられていたからだ。




