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大切な人たちを守るために⑤

「うーん……」


まどろみから覚めて、俺は眠気を追い払うようにして目をこすった。

目を開けた時、俺は夜の街ではなく、リンクス領の城の部屋のベッドにいた。

改めて、部屋の中をゆっくりと見渡す。


「そっか。憑依の魔法が途切れたのか……」


理性よりも先に、直感が結論を出した。

魔力の残り香だけが身体中を纏っていた。

まだ、現状を消化しきれていない。

どこからが夢で、どこからが現か。

どれだけ考えても、今の状況に納得いく説明をつけることができなかった。

街での出来事は、非現実ワールドに片足突っ込んで、夢と現の境目がはっきりしない。

だけど、少なくとも、『ただ呼び寄せただけ』と終わらせるには不思議に満ちていた。


『お兄ちゃんは、いつまでも待てないよ。ザナフェルのことが愛しいから。いずれ、また、世界を蹂躙するために会いに行くからね』


夢の続きのように先程、聞いたミカエル兄様の言葉が、微かに尾を引いて消える。

ミカエル兄様が本気で動き始めたら、俺はきっと、王宮に連れていかれてしまうだろう。

そうなったら、俺は再び、前世と同じ過ちを犯してしまうのだろうか。


「ネーア王国の建国祭。俺に……天使ザナフェルに感謝を伝えるお祭り……」


弱々しいつぶやきが、俺の口からこぼれる。

切なさのような、寂しさのような、言葉に言い表せない何かが、全身に染み渡っていくようだった。


「そのお祭りの夜の部だけ、ダナー商会が関わっているんだ……」


澄んだ空気をゆっくりと胸に吸い込んで、先程の出来事を呼び起こす。

このままだと、アナスタシア様たちの身が危ない。

そう考えれば、全てに合点がいく。


ルリア様は、『天使ザナフェルの加護』を持っている。

ありとあらゆる厄災から守ってくれる加護――。


だが、アナスタシア様たちの近くに、ダナー商会の者がいたら、今後も命を狙われる可能性がある……。

ミカエル兄様の話を踏まえると、ネーア王国の建国祭に来ていた商人たちが怪しいのかもしれない。

それに――。


「……俺が今まで出会ったことがある人たちの中に、ダナー商会の者がいるのかもしれないな」


予想はしていたけれど、改めて口にすると、その事実が重くのしかかる。

それでも俺は足掻く。

立ち止まって、後ろを向いて、『これまで』を積み重ねて。

でも、それは全部、『これから』のためだから。

停滞することとは、絶対に違うから――。


「とにかく、母さんに相談しよう。ミカエル兄様が言ったとおり、森の奥の魔物を倒してからなんて、悠長なことは言ってられないかもしれない!」


そう思い立つと、俺は大急ぎで、母さんのもとに向かった。

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