気がついたら別の場所へ⑥
うーん。
何でこんなことに?
レオさんはそもそも、俺がリリアーナ王女だと気づいていないみたいだし。
恐らく、目の前に立っているミカエル兄様が、ヴェルディ第一王子だとは思わないんだろうな。
ミカエル兄様と一緒に、感動引きずっているし。
「……お祭りに行く前に、こんなに疲れていたら、帰りまでもたないな」
いろいろと急展開すぎる!
俺ががっくりと肩を落としていると。
「肩を落として、しょんぼりしているザナフェル。かわいい……っ、尊い……っ。ザナフェルのかわいさがてんこ盛りしている。かわいいしかない!」
ん?
何で、ミカエル兄様は天を仰ぎ出したんだ?
「うんうん。それも分かるな」
レオさんも納得したように、しきりにうなずいている。
どういうことだろう?
意味が分からず、俺は完全に置いてきぼりにされた気分だった。
「彼女、めちゃくちゃかわいいよな」
ミカエル兄様に負けず劣らず、レオさんも肝が据わっている。
いや、俺たちの変装に気づかない辺り、意外と抜けているのかもしれない。
「はあ……」
俺は助けを求めるように、辺りを見回す。
探査の魔法で、周囲の状況を調べてみたけれど。
街の各所に身を潜めている護衛たちは、かなりの人数で配備されている。
ネーア王国の第一王子、ヴェルディ様と、聖王女としての託宣を受けた、ネーア王国の第三子、リリアーナ王女。
そんな二人の街巡り、やはり、警護は相当、厳重だ。
夜道は暗いし、気配も消しているみたいだし、レオさんは恐らく気づいていないだろう。
何とか、この状況を納めてくれないかな。
そんな俺の願いが聞き届いたのか、護衛の人たちがさっと、ミカエル兄様たちの前に姿を現した。
「な、なんだ?」
レオさんは音もなく、すーっと目の前に現れた護衛の人たちに驚愕する。
ネーア王国には、諜報などを担う部隊が存在する。
今回、俺たちの護衛を努めているのは、そんな人たちだ。
「今日はザナフェルがいるから、あまり、彼をもみくちゃにしないでね。とりあえず、街の破壊は禁止の方向で!」
話が初っぱなから壮大になった。
街破壊禁止!?
いつもは、どの規模の被害になるんだろう。
「もみくちゃ……ってまさか? ボコボコに叩きつぶすってことじゃ……?」
ミカエル兄様の言葉に、不穏な空気を感じ取ったのだろう。
レオさんの顔が明らかに引きつっているような気がした。
「簡単に言えば、そうなるな。理解が早くて助かる」
「マジで……!?」
満足げなミカエル兄様に、レオさんはサッと血の気が引く。
心臓がすくみ上がったのだろう。
「くっ、認めざるを得ない……。あんたが恐ろしくすごいってことをーー!!」
レオさんは踵を返すと、全力疾走。
脱兎のごとく、その場から逃げ出していった。




