演奏の力は効果抜群⑧
俺はゆっくりと振り向く。
そこには、スタン様だけではなく、領主のヴァイル様も立っていた。
「えっ? スタン様、ヴァイル様……?」
並々ならぬ顔ぶれに、俺は思わず、緊張してしまう。
「君たちのおかげで、森の調査がだいぶ進んだ。急ですまないが、これからのことを相談したいと思っている」
そう前置きして、スタン様はとつとつと語る。
「ここは人目がある。別の場所に移動してもいいかい?」
「は、はい」
「分かりました」
スタン様たちの後について歩き、俺と母さんは別の部屋に入った。
「どうぞ、かけてくれ」
「はい」
「ありがとうございます」
促されて、俺と母さんは応接セットにスタン様たちと向かい合わせに座る。
「今後の予定だが、明日から森の奥への調査を開始しようと思う」
改めて、表情を引き締めたスタン様は本題に入る。
いよいよ、森の奥か。
浄化魔法を使って、瘴気を一気に祓っている。
魔物はこれ以上、増加しない。
あとは残った魔物をすべて倒せば、この地は安全になるはずだ。
ただ、問題は森の奥に潜む手強い魔物だ。
前よりは、マシになっているとは思うけれど。
だが、それをこの場では口に出せない。
ただ、少しでも、森の奥の調査がしやすくなっていることを願うばかりだった。
「ライル様、アイリス様。この度は我が領のために、ご尽力いただき、誠にありがとうございました」
「お役に立てたのなら、嬉しいです」
「こちらこそ、いろいろと学ばせていただきました」
母さんの言葉に相まって、俺はぺこりと頭を下げた。
「お礼として細やかではありますが、今後、吟遊詩人様たちに何かありましたら、優先的に協力させていただきます」
「ありがとうございます。助かります」
「お心づかい、感謝します」
それを聞いた俺と母さんは、ぱあっと表情を華やかせる。
ミカエル兄様から逃れる手段はないに等しい。
だからと言って、何もしないわけにはいかない。
アナスタシア様とルリア様が苦しまなくていいように、できる限りのことをしたい。
だからこそ、差し伸べられた救いの手に、俺たちは感極まってしまった。
「本当に、たくさん素敵な時間を過ごさせていただき……」
「ライル、どうしたの?」
言葉を詰まらせた俺を見て、母さんが声をかけてきた。
「あ、その、新しい発見もあったし、来て良かったって思ったんだ」
「……そうね」
俺が噛みしめていると、母さんは優しく俺の手を握った。
「ライル、一人で抱え込まないで。私たちがいつでもそばにいる」
言い淀むこともなく、ただ真っ直ぐに見つめる瞳が、母さんの意思が変わらないことを伝えている。




