気がついたら別の場所へ①
「あなたのいる場所が、私たちのいる場所だから」
母さんはそう言って、俺を優しく抱きしめてくれた。
やっぱり、母さんの言葉は特別だ。
いつも、くじけそうになった時に力をくれる。
「母さん、ありがとう」
顔を上げた俺は改めて、現状を鑑みた。
森の奥に、ダナー商会の者たちはいない。
だけど、ドラゴンを始めとした手強い魔物が潜んでいる。
森の奥の調査が進めば、リンクス領はより安全な場所になるはずだ。
それに森の奥の調査が終われば、ルリア様が待っている屋敷に戻ることができる。
複雑な心境になる一方で、そんな期待も抱く。
「俺たちは、今回も戦闘には参加しないけれど、みんなが無事に戻れるように、サポートを徹底したいな……」
スタン様の護衛騎士たちや雇われた冒険者たちが、戦闘面を引き受けてくれる。
俺と母さんは基本、安全な場所で後方支援、みんなをサポートする演奏をしていくことになるだろう。
できる限りのことをしていきたいな!
さらに今後の予定を組み立て、スタン様たちの話は終わった。
「あ……」
スタン様たちとともに部屋を出た瞬間、さらに気持ちは引き締まった。
慌しく最後の準備をする冒険者や公爵家の護衛騎士の人たちの雰囲気が、緊張感をはらんでいたからだ。
「ついに森の奥か。何だか、緊張するな」
「そうね」
その緊張感が、俺と母さんにも伝染する。
俺たちの役目は、安全な場所で、みんなを支援すること。
だけど、森の奥には手強い魔物が潜んでいる。
恐ろしくて巨大なドラゴンか。
瘴気を祓っているとはいえ、大丈夫だろうか?
ふと胸をよぎる嫌な予感。
確証はない。
だが、こういう時の嫌な予感は当たるものだ。
慎重に越したことはないけれど。
さすがに調査の様子は、魔法の視界共有とかを使って見守ろうかな。
「まずは探査の魔法で、周囲の状況を調べてみよう」
俺はこれまでの現状から、そう結論づけた。
ただ、ミカエル兄様の動向が気がかりだ。
あれから音沙汰はないけれど、何かしら仕掛けてくる可能性が高いだろう。
それでも今はただ、この時間を堪能しよう――。
そう危惧していた矢先、俺に思わぬ災難が降りかかった。
「ん……」
どこか冷たい微睡みの中で、俺の意識はゆっくりと浮上した。
見覚えのある天井、ここは確か……。
「うまくいったみたいだね」
混乱をきたしていた俺のもとに、明るい金色の髪をした青年が近づいてきた。
抜けるような青空に似た瞳。
さらさらとした明るい金色の髪との対比が、本当に綺麗だと思った。
……だが、この状況はまさか!




