演奏の力は効果抜群⑦
「ライル、生まれてくれてありがとう……。 私のもとに、生まれてきてくれてありがとう。もし、泣きたくなったら、思いっきり、泣いていいからね。そばにいるから」
混乱の中に差し込んできた一筋の光みたいに温かく感じられる。
泣きたい時も、笑いたい時も、母さんのそばにいたい。
「ライル。あなたはどんな時も、私の大切な息子なのだから」
「……うん。母さん、ありがとう」
言い切って、母さんは穏やかな笑顔を向けてくれた。
約束一つでは、過去は変わらないだろう。
それでも、いつまでもくよくよしていられない。
俺は、この世界で……大切な人たちを守りたい!
もう大切なものから、手を離さないと決めたから!
母さんと一緒なら、運命だって変えられるかもしれない!
リンクス領に来てから数日。
今世は、前の人生の百倍の幸せをもらっている。
俺はしみじみとそう感じたのだった。
報告会の後、冒険者さんたちは引き続き、他の場所を調査することになった。
冒険者さんたちが森のあちこちに調査に出ている間、俺たちはここで留守番。
森の調査に、『吟遊詩人』は必要ないからだ。
俺たちがやることといえば、出発前の演奏会と報告会への出席くらい。
ただ、俺たち吟遊詩人に、有能な護衛がつく流れになってしまったせいで、何度か候補者と遭遇する羽目になった。
俺たちの推薦によって、候補を決めることになったからか、周りからのアピールが激しい。
あれから数日経った今も、俺はぐったりとしていた。
「森の調査もだいぶ進んだみたいね」
「ここまで順調だと、少し不安になるな」
母さんの言葉に、俺は戸惑いの表情を浮かべる。
そんな俺たちの会話を皮切りに、冒険者さんたちの熱狂が加速した。
「おおっ! これも、吟遊詩人様たちの演奏のおかげだ!」
「いや、ただの偶然なんじゃ……」
「いえ、間違いなく、吟遊詩人様たちのおかげです……! 素晴らしい演奏に、いつも力をもらっています!」
そうこぼした俺を見て、冒険者さんたちが嬉々とした表情で否定してくる。
「吟遊詩人様の演奏があるのなら、たとえ、ドラゴンに遭遇しても負ける気がしないな!」
「まさに、『吟遊詩人様の加護』と言っても過言じゃない!」
確定事項で攻めてくる冒険者さんたちの歓喜に、俺たちはもはや、困惑するしかない。
リンクス領に来てから、注目を浴びる日々だ。
「吟遊詩人様。ぜひ、私たちに護衛をさせてください!」
「いや、俺たちに!」
何やら、護衛争奪戦が加熱しそうになった――その時だった。
「ライルくん、アイリス様、ちょっといいかな?」
「……は、はい!」
声をかけてきたスタン様に、俺はそう返事した。




