演奏の力は効果抜群⑤
「ライルくん、アイリス様、改めて、ありがとう。このご恩は、絶対に忘れない」
スタン様の感謝の言葉に、ヴァイル様は申し合わせたようにうなずいた。
「冒険者の諸君。吟遊詩人の方々のおかげで、森の調査は順調だ。だが、森の奥にはドラゴンがいる。ダナー商会の動向も気がかりだ。いつ何が起きるか分からない。常に、万全の準備をしておいてくれ」
「はい」
ヴァイル様の鼓舞に、護衛騎士さんたちが応える。
その後も、当事者である俺たちを置き去りにして、トントン拍子で護衛の話は進んでいく。
「吟遊詩人の方々のおかげで、ここまでの成果を上げている。彼らを狙う者が現れないとは限らない。彼らを警護する者が必要だろう」
「彼らの護衛は、慎重に選ぶ必要があるな」
結局、俺たち吟遊詩人に、有能な護衛がつく流れになってしまった。
しかも、俺たちの推薦から、候補を決めることに。
だから……だろうか。
それから、俺たちの周りはさらに騒がしくなった。
すれ違う冒険者さんたちが、ここぞとばかりに自己アピールしてくるようになったからだ。
「うーん。効果は、ほどほどにしたはずなんだけど……」
「かなり、効果があったみたいね」
俺と母さんが廊下を歩けば、すれ違う人たちは脇に避けて、頭を下げてくるのだ。
冒険者さんたちの場合はもちろん、俺たちの護衛になりたいアピール付きだ。
「おおっ! 吟遊詩人様たちだ!」
「吟遊詩人様たちがいれば、ドラゴンなんて怖くないぞ!」
しかも、俺たちを見て、騎士さんたちが恍惚とした表情で声を震わせてくる。
創造魔法で創った『隠蔽魔法の強化版』のおかげで、周りの人たちに、俺の力がバレることはないんだけど。
その代わりに、『奇跡の演奏』だと言われて、多くの人たちに称えられている。
のんびりしたいのに、どこに行っても注目の的だ。
「もう、こうなったら、森の奥にいるドラゴンを説得するしか……!」
「私たちの話題で、もちきりになりそうね」
投げやりな俺のつぶやきに、母さんが穏やかに推察した。
魔物は実質、俺たち天使の支配下に置かれている。
だから、危険に晒される可能性は低い。
だが、母さんの言うとおり、ドラゴンが俺たちに従えば、この熱狂がさらに加熱するのは間違いない。
『ドラゴンの愛し子』とか言われそうだ。
「はあっ……。どう転んでも、注目されてしまう未来しかないみたいだ……」
俺はがっくりと悲しげにため息をついた。
何をやってもやり過ぎてしまう。
「はあ……。疲れた……」
与えられた自室にある机の上に突っ伏し、盛大に溜息を吐く。




