演奏の力は効果抜群②
「ローゼンさん」
「次は、オレたちの番だな」
ローゼンさんが配属された班は、先程の班の人たちより少し奥の場所に行くみたいだ。
ローゼンさんには、瘴気を祓う加護がある。
それに、この周辺の瘴気は、浄化魔法ですべて祓ったはずだ。
森に潜む魔物はこれ以上、増加しない。
あとは残った魔物をすべて倒せば、この地は安全になるはずだ。
「まあ、森のことは、オレたちに任せておきな」
「そうそう。私たち、こう見えて、まあまあ強いから」
ローゼンさんの力強い言葉に、リネアさんはくすくすと笑う。
「まあまあって何だよ」
「そこそこってこと」
ローゼンさんが視線を向けると、リネアさんはそう言って破顔する。
「まあ、とにかく、おまえらの演奏、良かったもんな。また、聞かせてくれよ」
ローゼンさんは咳払いを一つ挟み、気を取り直してと言わんばかりに口にした。
「ローゼン、演奏、聞いたことあるの?」
「ほら、前に話しただろう。ギルドで出会った吟遊詩人たち。すげえ良い演奏なんだぜ」
その言葉に、リネアさんが首をかしげると、ローゼンさんはさも当たり前のように言う。
すると、リネアさんの表情が華やいだ。
「そうなの。楽しみにしていますね」
「はい」
「ありがとうございます」
俺と母さんは顔を見合わせて、安堵とともに喜びを分かち合う。
前世では、忌み嫌われていた俺の天使の力が、大切な人たちの幸せにつながっている。
瞳から涙がこぼれることはなかったが、心は晴れ渡っていた。
その会話を皮切りに始まったのは、俺たちの演奏会――。
母さんが口ずさむ歌声に合わせて、俺はハープで主旋律を置いて行く。
星空みたいに透明な音が一音一音、宙で青くきらめいて、聴く者の心を揺さぶる美しい音色を響かせる。
あまりにも美しくて泣けてくるような調べはやがて、万華鏡みたいに色調と模様を変えていく。
ローゼンさんたちはその美しい旋律を、興味深そうに聞いていた。
危険な魔物が潜む森の調査。
ローゼンさんたちが、無事に戻ってきますように。
気持ちを確かに音色に込めれば、ローゼンさんたちの唇は微かに緩む。
俺たちが一礼したその瞬間、拍手が降り注いだ。
演奏に応える万雷の拍手が、俺たちの演奏に寄せられていた期待を示しているようだった。
「良かったよ」
「ええ、素敵だったわね」
「……うむ」
ローゼンさんの称賛に、リネアさんとホーネンさんも同意する。
「ローゼンさん、リネアさん、ホーネンさん、演奏を聞いてくれてありがとうございます。依頼、頑張ってください」
「こっちこそ、ありがとうな。じゃあ、オレたちは行くな」
そう言って、ローゼンさんたちは森へと出発した。
その後も、俺たちは森に向かう人たちに対して、演奏を披露していった。




